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見た目が悪いスイングでも、ボールをコントロールできていれば「良いスイング」!

石井良介のゴルフ・すべらない話:第16回

2024/03/20 ゴルフサプリ編集部

石井良介

石井良介の一面を一人語りという形でお届けする連載企画「石井良介のゴルフ・すべらない話」をどうぞ。第16回は、きれいなスイングならスコアが良くなるのか?というお話。

写真/ゴルフサプリ編集部

プロみたいなスイングになれなくてもゴルフを楽しむことはできる

スイングとは打ちたいとろにボールを運ぶ動作であり、ゴルフというゲームをするために必要な手段にすぎません。ですから、いろいろな教え方をする人がいていいし、いろいろな理論があっていいと思いますが、僕は「このメソッドをやってください」と、生徒さんに一定のやり方を押し付ける気はありません。言うなれば僕は “町医者”。「明日ゴルフなんだけど、スライスが止まらないんだよ!」みたいな、ごく一般のアマチュアゴルファーをレッスンすることが多く、ツアープロや競技ゴルファーは少なめです。

もちろん、懇意にさせてもらっている奥嶋誠昭さん、宮崎太輝くん、永井延宏さんら、諸先輩や仲間と喧々諤々やりながら最先端のスイングについて勉強していますし、さまざまな流派の人の話も聞いています。奥嶋さんはそもそも師匠ですし、太輝くんがアメリカから帰ってきたら、現地ではどんなことをやっているのか情報を聞かせてもらう、というように常にアンテナを広げていますが、だからといって、それを生徒さんに押し付けることはありません。

ゴルフスイング,山下美夢有

前にも書きましたが、僕はレッスンを始めるにあたり、必ず生徒さんに「今日は何がどうなったら喜んで帰ってくれますか?」と聞きます。理由は目的地がどこなのかをハッキリさせたいから。「一年後にこうなりたい」という人がいれば、「今月中」の人もいる、中には「今日中にこうなりたい!」という人もいます。それがわからないといけないので共有するために、最初の5~10分はコミュニケーションをとって方向性を決めます。まずはゴールを設定することが大事だということですね。

厳しい言い方かもしれませんが、現実的には、みんながみんなプロゴルファーみたいなスイングにはなれません。でも、ゴルフというゲームを楽しむ手段は身につけられる。生徒さんには、ゴルフに行くのが楽しくて、また行きたいと思えるようになってほしいですから、ゴールがどこであれ、その日にレッスンすれば「こういうことか!」と腑に落ちたり、確率は低くても何かができるようになるメニューを用意します。でないと練習の方向性が見出せないし、続けてもらえないからです。プロやトップアマの方ならば課題を出して「できるまでやってこい!」となりますが、そうじゃないですから。

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理論を教えるのではなくその人に合った対策を一緒に探すのがレッスン

僕のところには、スイングをきれいにしたいという方が結構来られます。正直、僕は自分のスイングがあまり好きではないですが『試打ラボしだるTV』を観てくださっている方の中には、僕のスイングが好きな方もいて「YouTubeばかり観ていたらスイングがわからなくなったので整えたい」と、YouTubeに出ている僕のところに来る方がたくさんおられます。

そんな方にはスイングを一旦組み立て直すために、基本練習をたくさんやっていただきます。あれもこれもやるのではなく、一つ一つ積み上げる。一つ積み上がったら次のところを積む作業に移るわけです。いずれにしても、ボールがフェースの芯に当たって、打ちたい方向に飛ぶことが“基本のき”です。しかし、それに欠かせない一つの決まったカタチがあるわけではなく、やり方は人それぞれ違う。背の高さ、腕の長さ、筋力などは百人百様ですから、当然できることとできないことがありますが、それでも真っすぐ打てる方法は必ずあります。プロのスイングを見て「こうなりたい」という気持ちはよくわかります。でも、正直それはなかなかできないので、自分の体を使ってどうやってボールに力を伝えるか、打ちたい方向に飛ばすか、ということをお伝えしたいと思っています。理論ではなく、その人に合った対策を一緒に探す作業がレッスンというわけです。

お恥ずかしい話ですが、僕もプロになって最初の一年目くらいはレッスンをする術を多く持ち合わせていなかったので、プロになるための練習メニューを、そのままアマチュアの方に教えていた時期がありました。でも、ある日お客さんに「プロになるわけじゃないんだから」と言われて考えを改めました。アマチュアの方が楽しむゴルフとプロのゴルフは違うんだと実感してから、レッスンはどうあるべきか、実際にはどうすべきかと日夜勉強し続けています。ただ「芯に当たっちゃった!」とか「ボールが飛んでいっちゃった!」ということをスイングの着地点としているのは一貫して変わりません。

「そうなるためには何をすればいいの?」という声が聞こえてきそうですが、そこはツラいところで、具体的な方法を挙げたところで、それがあなたに合うかはわかりません。経験から言うと合わない確率が高い。例えば同じスライスで悩んでいる方でも、みんな原因が違うからです。メディアの方からも「最大公約数的な人に向けての処方は?」などとも聞かれますが、ハッキリ言ってそんなのはなくて、あったらみんなもっと上手くなっているし、僕らのような仕事は成り立たないでしょう。

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ゴルフというゲームの中でスイングが占める重要度は25%くらい

一応、僕の手元にはトラックマンがあって、どうして曲がるのか、飛ばないのか、といった見当はつくので、その意味で言えば傾向やパターンはあると思います。でも、それはアウトサイド・インが強いとか、インサイド・アウトが強いとか、ダウンブローが強いとか、アッパーが強いとか、打点がバラつくとか「そんなのわかってる」といったことばかり。そのデータを見て、いくつもあるドリルの中からその人に合ったメニューを処方します。

とはいえ、その処方は結構感覚的で、本能的に「これだ!」と思ったメニューを処方することが多い。なぜ僕がそれをチョイスしたのか、その瞬間にはわからないこともあります。それでもおおむね合っているし、合っていなければクスリを変えるまで。いずれにしても何10年もレッスンをやっていますし、現在進行中の生徒さんも1000人を超えるので、真逆のクスリを出すことはありません。

石井良介

気をつけてほしいのは、スイングが良くなったからといって、スコアが良くなるとは限らないこと。もっと厳密に言うと「スイングがきれい=いいスコア」ではありません。いいスイングとは何かといえば、見た目がイマイチでもボールをコントロールできるスイングで、その方がはるかにゴルフはやりやすい。ゴルフというゲームをする中でスイングがどれくらい大事なのかといえば25%くらいかなと思います。フルショットの領域、ショートゲームの領域、コースマネジメントの領域、メンタルの領域と分かれてしまうと、それくらいしかないでしょう。ただし、OBを打っちゃうとか、チョロが出るのは良くないので、最低限ちゃんとフェース面に当たって、ホール幅の中にボールが飛ぶようにしたい。そうなれば80~90台で回れますから。

いずれにせよアマチュアの方は、スイングを習得する上で難しいことをしすぎだと思います。もっともこれはYouTubeの功罪でもある。僕もYouTubeをやっていますが、その立場で言うと、ピアノでいうところの“ドレミファソラシド”の弾き方を教えても誰も見ません。それこそ超絶技法みたいなことをやっている方が見てもらえる。でも、スイング作りに本当に必要なのはドレミファソラシドで、プロは日夜それをやっています。上手くなりたければ派手な練習なんて一つもいらないし、しない方がいい。つまらない練習だけやるべきなんです。正直それだと生徒さんがいなくなるので楽しい練習もしますけど(笑)。

結局のところ、レッスンはコミュニケーションしかないと思います。中には何もしないで満足して帰られる生徒さんもいます。対話しているうちに不安がなくなり「ああ、それでいいんだ」だけで良くなる人もいるのです。信頼関係もないといけないので初対面の生徒さんでは難しいですが、長く付き合えばそういうこともある。究極、そうなっていただくと僕も楽なんですけどね……。

石井良介

石井良介
いしい・りょうすけ。1981年生まれ。『令和の試打職人』として各種メディアに引っ張りだこの人気解説者。PGAティーチングプロA級。You tube「試打ラボしだるTV」が人気。早くからトラックマンを活用したレッスンを開始。高い経験値と分析力で正しいスイング、正しいギアへと導く指導と的確な試打インプレッションに定評がある。


石井良介のゴルフ・すべらない話

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