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このパターを知っているゴルファーはかなりのゴルフ通かも【ケビン・バーンズのパター】

戸川景の重箱の隅、つつかせていただきます|第45回

2024/05/09 ゴルフトゥデイ 編集部

パッティング,グリーン

スイング、ゴルフギア、ルールなどなど…。ゴルフに関わるすべての事柄の“重箱の隅”をゴルフライター・戸川景が、独自の目線でつつかせていただくコラムです。
Text by Hikaru Togawa
Illustration by リサオ
GOLF TODAY本誌 No.623/74ページより

“優れたパター”とは誰が評価するのか?

イラスト

3月初旬に恒例の見本市「ジャパンゴルフフェア」が開催された。コロナ禍以降、少しずつ活況を取り戻してきたようだが、ネット全盛の現在、これといった新情報はないだろうと思いつつ、ブースを眺めて歩き回っていたら『ケビン・バーンズ』を見つけてしまった。

1990年代にCNC加工による、いわゆる“削り出し”パターがその精度と美しさでツアーや市場で注目を集めるようになり、数多くのパターメーカーが台頭してきた。その1つが『ケビン・バーンズ』だった。

パターはまず、ツアーでの活躍で評価される。『ケビン・バーンズ』は1996年のクレイグ・スタドラーの優勝で認知され、1999年のホセ・マリア・オラサバルのマスターズ優勝で人気ブランドに。2001年にはブリヂストンゴルフと提携して『ツアーステージ』ラインで約4年、製造販売されていた。

実は私は、『ケビン・バーンズ』こそ市販レベルでは世界最高のパターだと思っている。とにかく、フェース向き、ソールの座り、ネックの入り方のバランスが絶妙なのだ。パターの完成度を見るのは、この3点に尽きる。

20代の頃、クラブ研究に没頭した時期があり、クラブの善しあしについて設計家や名工に直接教わる機会があった。その際に養った感覚、捉え方は今でも通用するはずだと思っている。

通常、削り出しなら設計通り、先程述べた3点は整うと思うだろうが、そんなことはない。一番難しいのは、ネック=シャフトとの接合部だ。

市販品で本当の合格点を出せるのは、100本に1本あればいいほう。偶然の産物レベルなのだ。

イラスト

ところが『ケビン・バーンズ』は、全てが合格点。2001年当時、ブリヂストンの『ツアーステージ』は量産品なので、さすがに無理だろうと店頭に並ぶモデルを機会あるごとにチェックしたが、驚いたことに品質を保っていた。

後で聞いた話だが、ブリヂストンが求める生産量にまったく届いていなかったそうで、とにかく完成度を優先していたらしい。利益後回しの“頑固オヤジ”気質が伝わってくるエピソードだ。

本質的に優れた“道具”を作る職人は、流行を追ったり奇抜なデザインを発案したりはしない。だが、この姿勢はゴルフクラブというオモチャ産業(と私は思っている)では、人気を持続することが非常に難しい。

だから、『ケビン・バーンズ』が未だに質を落とさず、事業継続していたことに驚き、喜んでしまったのだ。しかもヘッドとネックを分けて作る2ピース構造に進化。ライ角を“曲げずに合わせる”ということは、実はパターでは最重要。やはりケビン・バーンズはよくわかっていた。

20数年前、日本のトーナメント会場にケビン・バーンズがプロモーションで練習グリーンにパターを並べていた。私も手に取り、さすがプロ仕様はよくできている、と褒めたら「市販品も同レベルだ、パターにプロもアマもない」と話してくれた。その言葉に嘘はなかったと、今年の「ジャパンゴルフフェア」でも再確認できたと感じている。

ちなみに、日本では田中秀道が日本オープンなど優勝時に愛用。「ゴルフフェア」の2日目にブースを訪れ、今もネットで『ケビン・バーンズ』を物色していると話していた。

田中は「地面から生えているような(安定した座り心地)」と形容していたが、まさに3点のバランスの完成度から生じるフィーリングだろう。

このパターで入らなければ、打ち方が悪い。そう思い込める1本が手に入れば、そのパターはパットの調子のバロメーター、“モノサシ”となってくれるはずだ。

戸川景(とがわ・ひかる)

1965年3月12日生まれ。ゴルフ用具メーカー、ゴルフ誌編集部を経て(株)オオタタキ設立。現在、ライターとしてゴルフのテーマ全般を手掛けている。

重箱の隅、つつかせていただきます

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