欧州トッププロの代理人のチャビー・チャンドラーって知ってる?
佐渡充高のプレミアム・ファイル
ゴルフ番組やゴルフ雑誌ではあまり語られることのないトピックを、ゴルフジャーナリストやトーナメント中継の解説者として活躍する佐渡充高が取り上げ、独自の見解とともにお届けします。
GOLF TODAY本誌 No.628/107ページ
英国ゴルフのThe Godfather チャビー・チャンドラー
英国出身チャビー・チャンドラー(71歳)は欧州トッププロの代理人として活躍し35年。2011年4大メジャーは所属選手のC・シュワーツェル、R・マキロイ、D・クラークの3人が勝利、年間グランドスラムに王手をかけチャビースラムなるか? と話題に。DPワールド歴代コミッショナーも意見や協力を求めるほど大きな影響力を持つ。自身がトルコ系英国人で中東各国とのパイプも太くLIVゴルフへ移籍した所属選手を通じサウジアラビアとも良好な関係だ。彼は10年以上前から「4日間72H以外が必要。どうして誰もやらないのか?」と新形態への挑戦を力説し、LIVゴルフが実現した。
チャビーは365日年中無休、各国でプレーする選手をサポートし世界中にオフィスを持つ多国籍スポーツエージェントのリーダー。
その原点は少年時代の経験にある。プロを目指し高校を中退。朝4時頃から汽車の積み荷や郵便配達、屋根職人などを効率よくこなし昼前にゴルフ場へ。猛練習を経てプロになったが「きわめて不成功に終わった選手」と笑顔で表現。ツアー生活15年で全英オープン7回出場も6回予選落ちで65位が最高位。活躍とは程遠かったが、自身の意外な才能に気づく。選手仲間に頼まれたコスパやタイパの優れたホテルやレストランの手配が評判になり、やがて旅のアレンジまで担い「オーガナイザー」と呼ばれはじめた。
若いマキロイの活躍を公私に渡りサポートするチャビーは米ゴルフワールド誌2011年4月号でも取り上げられた。
ある時、友人からダレン・クラークという凄い少年がいると聞き見に行ったところ想像以上の才能に驚き、思わずサポートしたいと申し出た。それを契機に選手を引退し代理人業をスタートしたものの、助言を仰ぐ先人がなく手探りだった。彼にあったのは共感力。徹底的に選手の立場で考え、自身の果たせなかった夢を重ね粉骨砕身でクラークを支え初優勝へと導いた。その様子を見た、リー・ウェストウッドの両親からオファーがあり契約、南ア出身エルスら次々に依頼を受けるようになった。マキロイは13歳時に出会いプロ転向前に家の購入なども手助け。「少年の頃から大構想を持っていた。初志貫徹は良いが頑固すぎる面が心配だった」という言葉が僕は気になった。その後マキロイは米国に拠点を移しライバル社へ移籍したが、私的には今も交流が続いている。
チャビーは20年前に「シャツに入れる企業ロゴよりSNSのインパクト。うまく活用できるのがスター選手の条件に」と予言。そして両腕を広げ「年老いても少年時代の情熱を忘れず、既成概念にとらわれず新しいアイデアに挑戦したい」と豪快に抱負を語った。昨今も若手選手の発掘とサポートに情熱を注いでおり、キャリア40周年に向けチャビーの手腕が楽しみだ。
前DPワールドツアーコミッショナーのキース・ペリー氏と会話するほどチャビーの存在感は2019年ゴルフオーストラリア6月号でも記事に。
D・ウィレットのマスターズ優勝背後にチャビーの力ありと2019年ゴルフオーストラリア誌6月号で特集。
Andrew Chubby Chandler(アンドリュー・チャビー・チャンドラー)/マネジメント
1953年4月イギリス生まれ。欧州でツアープロを経てスポーツマネジメント会社International Sports Management (ISM)を創設。ワンマンバンドから世界各地にオフィスを持つグローバル企業のリーダーに。1974年プロ転向、1989年36歳で引退し同年マネージメント業を開始。翌年アマのDクラークと契約。家族のごとく強い絆で成功を目指し2010-2011年は契約選手4人(ウーストヘイゼン、シュワーツェル、マキロイ、クラーク)が勝利しメジャー請負人と世界から大注目。
●文/佐渡充高
さど・みつたか
上智大学法学部卒業。1985年に渡米し、USPGAツアーを中心に世界のゴルフを取材。2022年まで32年間NHKゴルフ解説者。2023年からBS放送局『BSJapanext』にて「大正製薬 Presents PGA TOUR TV Program PGA ツアー」の解説者に。※2024年からは「フォーラムエイト Presents PGA TOUR TV Program PGA ツアー」。
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