構想から10年。世界初採用、「VR-チタン」に秘められた粘りと初速。

「ゼクシオ14」で最も大きな変化はドライバーのフェース素材を変えたこと。国民的ブランドとなった「ゼクシオ」のフェースは、2006年発売の4代目から変えていなかった。

2000年2月に発売された初代「ゼクシオ」。21世紀を意味する「XXI」と、突き進む・超えるの「ON」をつなげたのが名前の由来。

「ゼクシオ14」に採用した新フェース素材「VR-チタン」は、ゴルフクラブにはじめて採用されたのではなく、工業製品として世界初という正真正銘の新素材。「ゼクシオ11」から企画を担当している佐藤弘樹は、

「今回はプロジェクトがはじまった段階から“変えられるところは全部変えよう”というのがテーマでした。前作からはひと目でわかるくらいガラッと変えたいと思っていました」

フェース素材を変えることは「ゼクシオ」にとって禁断の領域ではなかったのか。

「今までのフェースも素晴らしい性能でしたが、ドライバーではルール制限があるなかでもさらにボールスピード、飛距離性能を高めることを求められています。要素開発のチームは1年前とか2年前とかの話ではなく、10年以上前から新しいフェース素材を模索していました」(佐藤)

「ゼクシオ」』から開発チームに加わった水谷成宏(住友ゴム工業株式会社 スポーツ事業本部 商品開発統括部 クラブ技術グループ 課長)は、10年以上にわたりフェースの開発を担当してきたメンバーの一人。

「フェースの素材開発については日本製鉄さんにお願いしています。2015年頃には当時のフェース素材より強度があり、軽量化できる素材をリクエストさせてもらってい「した。ただし、強度を上げると、硬くなってしまうので素材としては脆(もろ)くなる。また、『ゼクシオ4(適合モデル)』から使っているフェース素材(Super-TIX®51AF)は軽比重で、耐久性のバランスもとれていました。なかなかそれ以上の素材を見つけるのは難しかった」(水谷)

「フェースを変えたのは20年ぶりです。今回は変えられるところはすべて変えました」

「VR-チタン」はシリコンを加えただけではなく、鉄やアルミニウムの配合比率も変えたことで強度を高くした。

初期の「ゼクシオ」ドライバーのフェースは当時の高反発ドライバーで一般的に使われていた「βチタン」。それを4代目から「Super-TIX®51AF」にすることで“ゼクシオの飛びとやさしさ”を確立。「ゼクシオ7」はシリーズ最大のヒットを記録した。13代目まで同じフェースを使い続けたが、ブレークスルーのきっかけとなったのがシリコン素材だった。

チタンフェースにシリコンを添加することで強度を保ちながら粘性を出すことができる。

「新しいフェース素材について、日本製鉄さんから最初に提案を受けたのが2022年頃。そこからヘッドへの採用することを検討しはじめて、今回の「ゼクシオ14」に採用することができました」

「VR-チタン」はシリコンを添加したことによって強度を向上しながらも粘りを持たせたことによって、従来のフェースに比べて42%も強度が向上している。粘りをもたせたことが新しい相乗効果にもつながった。

「フェース素材に粘りがあることによって、ソールやボディをさらにたわませられることが可能になりました。フェースの反発制限はルールで決められています。最近の『ゼクシオ』は『スリクソン』同様にボディの軟らかい部分・硬い部分を交互に配置しています。ヘッド全体をたわませる「リバウンドフレーム構造」を軸にVR-チタンの特性を活かした新たな「ULTiFLEX(アルチフレックス)」構造を開発し、ボールスピードを上げています。『VR-チタン』は粘りがあることによって、たわみの効果を最大限に発揮できるようになりました」(佐藤)

同社のテスト結果では「ゼクシオ13」と比較したときの高初速エリアが、フェース周辺部で151%、フェース中央部で183%も広くなった。

フェース素材が変わったことに、プロゴルファーはすぐ反応した。

プロゴルファーのテストに立ち会った佐藤は、
「試合で『ゼクシオドライバー』を使っている青木瀬令奈プロ、菅沼菜々プロに打ってもらうと、最初のテストから『ボールスピードが速くなった』『今までより飛ぶようになった』ということで評価が高かったです」

松山英樹のテストにも同席していた佐藤は、
「いつも松山プロは率直な意見を言ってくれます。『ゼクシオ14』も詳細な製品説明をしてない状態で打ってもらったのですが、『(打感が)やわらかいのに、初速がビュッと出る。このフェースは好きになりそう』と言っていました」

世界初のフェース素材に、世界の松山英樹も太鼓判を押した。

「意外だったのは松山選手は『ゼクシオ14+』より『ゼクシオ14』の打感や弾道を気に入ってくれました。ヘッドの性能としてはあらためて幅広いゴルファーが使えるモデルなのだと確信しました」

逆転の発想。空気抵抗を大きくする「翼」が芯に当ててくれるやさしさに

“1球目から芯に当たる”と言われる「ゼクシオ」。その秘密は他のゴルフメーカーとは異なる空力性能の考え方と、ゼクシオ独自の「翼」にあった。

ピン、テーラーメイド、キャロウェイなど米国のゴルフメーカーでも空力性能は重要なテクノロジーになっている。米国では空気抵抗を小さくすることで、ヘッドスピードアップを上げようとするメーカーが多い。

しかし、「ゼクシオ」は違う。12代目から採用した「アクティブウイング」は、空気抵抗をあえて大きくするという逆転の発想から生まれた。初代の「アクティブウイング」から携わってきた佐藤は、

「ゼクシオは7代目以降にゴルファーのスイングを分析する開発に力を入れてきました。当時はシャフトの剛性分布を変えることで振りやすくしました。11代目ではグリップ側にウェイトを配置するウェイトプラステクノロジーを採用しました。7代目から11代目まではシャフトやグリップで振りやすさを進化させてきましたが、12代目以降はクラブの振りやすさに加えてヘッドでも振りやすさをサポートできないかというテーマになり、そこから生まれたのが『アクティブウイング』でした」

前作より壁を高くして、外側に移動した

開発メンバーの水谷はそのメカニズムについて解説してくれた。

「アマチュアゴルファーのスイングを分析した結果、スイング軌道がズレるタイミングは切り返しからダウンスイングの初期にありました。トップから切り返して方向転換したときにスイング軌道のエラーが起きやすい。時計で言えば12時から9時(切り返しからハーフウェイダウン)。アクティブウイングは12時から9時のときに空気の流れに対する壁となってヘッドが垂れる動きを抑えてくれる。専門用語で言えばトゥダウンを抑えることができる。それが『ゼクシオ』のやさしさ、芯の当てやすさにつながっています。1球目から芯に当たる秘密はここにあります」

「ゼクシオ12」のアクティブウイングは四角形の突起だった。「ゼクシオ13」では突起が2つになり、「ゼクシオ14」ではさらに壁の効果を上げた。

「2つの突起を高くしつつ、ヘッド(クラウン)の最も外側に配置することで、空気の流れを受け止める効果を高めました。今回はソール側も凹凸(おうとつ)のあるデザインにすることで、クラウンとソールのアクティブウイングの効果によって空力性能でトゥダウンを抑える設計になっています」

空気抵抗を大きくするアクティブウイングがあることで、ヘッドスピードを妨げることにはならないのか?

「アクティブウイングの影響で空気抵抗が大きくなるのは切り返しからハーフウェイダウンまでの話です。ハーフウェイダウンからインパクト、フォローにかけては空気抵抗を増やさない形状になっています。そもそも『ゼクシオ』はシャローヘッドなので、インパクト前後の空気抵抗はすごく少ない」

14代目で初の調整機能を搭載した理由はーー。

もう一つ、「ゼクシオ14」で大きく変わったことは調整機能がついたこと。12代目以降は「ゼクシオ エックスシリーズ」に調整機能がついていたが、メインモデルに搭載したのははじめて。その理由は?

「今までのようにヘッドとシャフトが接着されたゼクシオに魅力を感じる方も多かったのですが、ゼクシオユーザーでもシャフトの脱着に興味がある人が増えてきました。ただし、調整機能をつけるとネック周りの重量が増えて振りにくくなる可能性が高い。それが最大の問題でした。重量の問題を解決するために『ゼクシオ14』ではネックを7㎜短くして約2グラム軽量化した。『ゼクシオ14+』では中空部分を作ることで、同じく約2グラム軽くしました」

「変えていないのは飛び、打ちやすさ、爽快感」

“変えられるところはすべて変える”と語っていた佐藤は最後にこんなことを言った。

「ここまで大きく変えたことで、企画チームとしては名前も変えようかという話にあり、数字(14)ではない具体的案も出ました。でも、逆に言えば絶対に変えられないところがあるのがゼクシオ。それは長年継承してきた飛び、打ちやすさ、爽快感です。世界初のフェース素材を採用したのは『飛び』、アクティブウイングは『打ちやすさ』。そうした新たな機能、形状を追加してもゼクシオサウンドの『爽快感』は健在です」

25年目の「ゼクシオ14」は素材、デザイン、設計まで大幅に変わった。それでも「ゼクシオ」であることは変わらない。それが25年間、日本人から愛される信頼につながっている。