“飛ぶバット”のテクノロジーをフェースにフィードバック


「JPX ONE」ドライバーで特筆すべきはフェース面に装着された特殊樹脂「NANOALLOY®」(ナノアロイ)。これは合成繊維や合成樹脂をはじめとする化学製品や情報関連素材を扱う総合化学メーカー・東レの特許技術によって生み出された新素材で、衝撃を受けた時にフェースが動的に変形してボールのエネルギーを余すところなく反発力に変換するというもの。従来のフェースではインパクトでボールが潰れすぎてエネルギーロスが生じていたがナノアロイによってこれが解消されたという。

薄肉化した新しい「コアテックフェース」に「ナノアロイフェース」を”貼り付けて”ある。

そもそもこの着想はミズノの軟式野球用バット「ビヨンドマックス」の設計アプローチから得たもの。「ビヨンドマックス」は野球を嗜む人なら誰でも知っているほど高性能の“飛ぶバット”。その構造が「JPX ONE」に応用されたことで高初速と直進性、さらにはスイートエリアの拡大までをももたらした。

「僕も野球経験者なので、軟式ボールを金属バットで打つと当たった瞬間にボールがえらく潰れて飛ばないのは感覚としてわかります。そこでボールを潰しすぎないテクノロジーとして樹脂に包まれたビヨンドマックスが登場しました。草野球でもビヨンドマックスを持ったバッターが出てくると外野手が後ろに下がらなければならないほど飛んでいました。僕の生徒さんの野球経験者も敏感に反応していて、ビヨンドマックスを認知している人たちは、“それならドライバーも飛ぶに決まっているよ”と、すでに答えが出ているような口ぶりです」(石井)

心地よい打感と爽快感あふれる金属の打球音が共存

では、実際のところどうなのか? まずは見た感じから打感、打音についてのインプレッションから聞いてみよう。

「ソールデザインやウエイトの配置はオーソドックスでミズノの大きなエンブレムも印象的です。きれいな顔つきのクラブを作り続けてきたメーカーらしく、構えた時にフェースが左を向いている感じがなくてアドレスしやすい。押さえるべきところを押さえてあるのでツアープロでも使える仕上がりだと思います。一番気になるのは青いフェース面で、誰が見ても“何だろう、ナノアロイって?”となりそうですが、前述したように僕は野球をやっていたので、すぐにビヨンドマックスのことが頭に浮かびました。とはいえ、軟式ボールが潰れすぎないように軟らかくした、という程度の知識しかなく、ドライバーのフェースに応用することで、どんな効果が得られるのか想像ができていませんでした。

ところが打ってみると驚きで、フェースは樹脂なのに金属の打感が先にきました。もちろん金属面で打っていないので硬さはありませんが、打音は爽快感あふれる金属音で心地いい。音だけ聞くと誰もがカチッとした打感を想像すると思いますが、実際は適度に軟らかくて”良い感触”です」

ナノアロイの正体は複数のポリマーをナノメートルオーダーで混合したポリマーアロイ構造を形成させる東レ独自の技術。衝撃を与えると軟らかくなる特性があるためフェース全体が変形する。打点周辺のみならずフェース全体がたわむのでボールの変形が小さいというわけだ。ただ、これだけでは石井の言う“心地いい金属音”の説明がつかないので突っ込んで聞いてみると、

「あくまで僕の想像ですが、フェースのベースとなる金属部分を高反発にし、その上からナノアロイで蓋をすることで軟らかさをコントロールしているのではないかと思います。例えば料理を食べる時、味付けとして塩が入っているのと、あとから塩をかけて食べたのでは、当然後者の方が塩の味を感じますよね。それと同じでボールのファーストコンタクトがナノアロイだから、まず“むにゅっ”とした軟らかさがきて、そのあとにベースの金属で弾く感じがくる、ということではないかと思います。真偽は定かではありませんが、こんなふうに想像をたくましくさせてくれるところもJPX ONEの楽しいところです」

とのこと。メーカーによるとフェースのコア部分はナノアロイフェースに合わせて最適化された専用設計の「CORTECH(コアテック)フェース」。従来モデルの「ST-MAX」と比較した場合、最大で約11%薄肉化されている。これにより打球速度はもちろん高初速エリアも拡大されたというから石井の憶測はいい線をいっているかもしれない。

どのヘッドスピード帯でも60m/sに迫る高初速をマーク

次に打ったボールの実測データを見てみよう。アマチュアのコアヘッドスピードである40m/s前後と、ちょっと速めの43m/s前後、さらに45m/s前後の3通りのヘッドスピードで打ってもらい、各々の平均値を求めたのが下の画面だ。

JPX ONE ヘッドスピード40m/s前後

JPX ONE ヘッドスピード43m/s前後

JPX ONE ヘッドスピード45m/s前後

全てのヘッドスピードでボールスピード(初速)が60m/sを突破。同時にスマッシュファクター(ミート率)も最高値の目安となる1.5に迫った。さらにヘッドスピードがアップするほどスピン量が減って飛距離も順調に伸びた。

「ナノアロイを含むフェースの効果でしょうか、練習場ではもちろんこと、コースで打ってもミート率が極めて高く、初速性能の高さを実感できます。気温が低く、アゲンストの風の中での試打でしたが、打球がフケることもなく、多少左右に球が出てもホールを外れるようなことはありませんでした。初速が速いぶん直進性もあってヘッドスピードに関わらず強い弾道の球が打てますね。スピン量のコントロールはスイングやボールでもできますが、初速はクラブ頼りですから初速が出るクラブはすごく魅力的です。それが構えやすく顔もきれいですから、このままラウンドで使ってみたい気にさせてくれます」

なお、「JPX ONE」とともにシリーズの両翼をなす「JPX ONE SELECT」の試打データは以下の通り。

JPX ONE SELECT ヘッドスピード40m/s前後

JPX ONE SELECT ヘッドスピード43m/s前後

JPX ONE SELECT ヘッドスピード45m/s前後

「JPX ONE SELECT」もヘッドスピード帯によって「JPX ONE」と同じようなデータ傾向だったが、ヘッドスピードがアップするほど飛距離の伸びが顕著になり、安心して叩けるヘッドであることが明らかになった。

2モデルとも高初速。コースで打っても高ミート率を連発!

SELECTのヘッドはスタンダードモデルに比べると洋ナシ型。スクエアフェースで構えやすく、適度な操作性を備えている。

「操作性については、シンプルに顔つきやヘッドの投影面積に反映されたソールの広さで変わります。クラブに頼ってオートマチックにボールがつかまるのはJPX ONE、操作性があってボールをつかまえたり逃がしたりできるのがSELECTなので、好みのタイプを選んでいただければいいでしょう。僕はSELECTの方が叩ける顔つきで好きですが、打ってみるとJPX ONEのやさしさも非常に魅力的で、コースならやっぱりこっちが安全かなとちょっと迷います。ボールが浮きづらい人なら間違いなくJPX ONEがいいでしょう。中にはクラブの顔つきに反応してスイングが変わるゴルファーもいますから、自分のスイングとの関連性を考えながら選ぶべき。結果が出てない人が、自分とは逆のタイプだと思っているモデルを試すと当たることも少なからずあるので、先入観にとらわれず両方打ってみることをおすすめします。2モデルとも初速性能が高く、コースで打ってもミート率1.5を連発するのはすごいこと。どちらもカチャカチャでロフトを変えながら自分好みにアジャストするのもいいでしょう」

ちなみにJPX ONEのロフトは9度と10.5度、SELECTは9度が標準で、ともに±2度まで変えることができる。では最後にJPX ONEシリーズを打った感想をまとめてもらおう。

「今回ミズノのドライバーが発売前に大きな話題になっているのは、とても喜ばしいことだと思います。スポーツ総合ブランドが他競技の道具からヒントを得て、そのテクノロジーをドライバーにフィードバックしたところも興味深く、エピソードとしても面白い。そもそもミズノはチタンドライバーやスライド式のウエイトなど革新技術のパイオニア的一面をもつメーカー。今回はチタンフェースにナノアロイを装着したシンプルな作りですが、それでも素材の開発はもちろん、スコアラインを入れる、接着の強度など最終的にレギュレーションをクリアするには相当の時間と労力が注ぎ込まれているはずです。行き詰まっているとも言われるゴルフクラブ開発ですが、これまでにないパターンで生まれたJPX ONEシリーズは今後のドライバー開発に一石を投じる国産クラブになりそうだと感じました」

なお、純正シャフトは「JPX ONE」が「MFUSION HT D」、「TENSEI BLUE MM D」、「TENSEI RED MM D」の3種類。「JPX ONE SELECT」では「TENSEI BLUE MM D」、「TENSEI RED MM D」の2種類。10万円を切る(税込9万2400円)価格設定も良心的といえよう。百聞は一見に如かず。まずは最寄りのショップで試打してみることをおすすめする。

ミズノ公式ホームページ「このドライバー、バケモノだ」

https://jpn.mizuno.com/golf/jpx_one

「JPX ONE」の飛びを女子ツアー開幕戦で確かめよう!

目指すはツアー2勝目! プロ3年目の稲垣那奈子は「JPX ONE」でシーズンイン

この記事の公開日は、女子ツアーの開幕戦「第39回ダイキンオーキッドレディストーナメント」の2日目。例年になる沖縄の風を強く吹いている琉球ゴルフ倶楽部で、「JPX ONE」シリーズの飛びは使用選手たちをどのように支えているのか? 是非、現地観戦や放送・配信で確かめてみてほしい。

さて、開幕戦で「JPX ONE」シリーズを使用しているのは、まず稲垣那奈子。プロ2年目として迎えた2025シーズンの「リゾートトラスト レディス」でツアー初優勝に輝いた期待の若手だ。そんな稲垣の開幕セッティングは、ご覧の通り(写真下)。ドライバーには「JPX ONE」(9度/24 VENTUS RED 50S)をチョイス。そして、フェアウェイウッドとユーティリティにも「JPX ONE」シリーズを選んでいる。

稲垣が使用する「JPX ONE フェアウェイウッド」は、ウレタン樹脂と一体成形された”鉄芯ステンレス”がヘッド内の底部に設置されており、反発力を大幅に向上させる効果を持つ。また、ドライバー同様に新「コアテックフェース」と搭載し、飛距離性能に優れたフェアウェイウッドだ。

そして「JPX ONE ユーティリティ」は、フェース素材にマレージング鋼(MAS1C)を採用。高い強度と靱性を備えた特殊合金鋼で、フェースの薄肉化し反発力を高めている。また、ユーティリティとフェアウェイウッドのどちらも、ソールのリーディングエッジに丸みを持たせた設計の「スピード ベベル ソール」が採用されており、振り抜きやすさが追求されている。

稲垣はフェアウェイウッドに「JPX ONE FW」の3W(15度)・5W(18度)、ユーティリティに「JPX ONE UT」の4U(22度)・5U(25度)を選んでいる。

寺岡沙弥香はシューズもミズノ!

2024年のプロテストにトップ合格した寺岡沙弥香も注目のルーキーだ。2023・24年には2年連続で「オーガスタナショナル女子アマチュア」にも出場している。ミズノのクラブとは中学生の頃からの”付き合い”だ。

そんな寺岡も「JPX ONE」シリーズを開幕戦に投入。ドライバーは「JPX ONE SELECT」(9度/24 VENTUS RED 50S)、そして3本あるユーティリティのうち1本に「JPX ONE UT」の3U(19度)を選んでいる(ほか2本はST-Z 230の22度と25度)。

開幕戦では、200ヤード前後を打つ番手を入れ替えたり調整する選手が多いが、「JPX ONE UT」の19度はどのホールのどんな場面で寺岡のショットを支えるのか、期待を持って見守りたい。

開幕戦ではミズノ契約選手の足元にも注目!

稲垣、寺岡の両名が着用しているゴルフシューズは、つい先日に発売されたばかりのミズノの新作ゴルフシューズ「CONTENDER GS」(カラー:オフホワイト×ネイビー)。寺岡に履き心地を聞くと「ソフトな履き心地でとても歩きやすいです」とニッコリ(写真左)。

1995年に発売されたランニングシューズを、ライフスタイル仕様に復刻した「CONTENDER」デザインのゴルフシューズなのだが、ツアープロが使用していることが証明しているように高いグリップ力を備えている。