「安全に行く」は“成功を狙う思考”になっている
サプリ 今回は「ここは無理せず安全に行こう」と判断して打ったのに、結局ミスしてしまう、という“あるある”です。刻むつもりで打ったのにトップしたり、距離も方向も中途半端になってしまうことって多いですよね。
今野 ありますね。先日もまさにその話をしながらラウンドレッスンしました。多くの人は「無理をしない=スコアを良くする選択」と考えていますよね。でもそれって結局、「成功を増やそう」としているだけなんです。
例えば、3パットを減らしてボギーやダボを防ぎたいからワンパットを増やそうとするのと同じで、「いかに成功するか」を考えている。やっていることは普通のショットと変わらないんですよ。
サプリ 確かに、守っているつもりで攻めているとも言えますね。
今野 そうなんです。でも上級者は違います。「失敗の質を高める」とか「どうやって失敗するか」を考えている。スコアを良くしたいという目的は同じでも、アプローチが真逆なんです。
ゴルフって、本来はティーイングエリアに立ったら全ホールでホールインワンを狙うのが究極の攻めですよね。でもそれをやるとOBや池があるから、「次の1打が楽になる場所」にボールを運ぶという妥協をする。そのためのショットがレイアップなんです。
でも実際は、「とりあえずあの辺に行けばいいだろう」とか、「軽く打てば大丈夫だろう」という曖昧な考えで打っている人が多い。だから中途半端なミスになるんです。
刻むなら“全力で刻む”。中途半端が一番ダメ
サプリ 確かに「軽く打てばいい」と思ってしまいます。
今野 そこが一番の勘違いです。本当に刻むなら、ドライバーで軽く打つんじゃなくて、確実にその距離を打てる番手を持つか、長いクラブでも距離をコントロールする前提で打たないといけない。
でも多くの人は、「とりあえず軽く振る」という選択をしてしまう。それはレイアップではなくて、ただの中途半端なショットです。
サプリ たしかに“ちゃんと刻む”という感覚ではないですね。
今野 上級者は“抜き方”がうまいんです。ラウンド中って、実はフルスイングよりも「抜いたショット」の方が多いくらいなんですよ。
サプリ 抜く、というのはどういうことですか?
今野 簡単に言うと、「全力でやらないことを、全力でやる」ということです。全力で飛ばさない、全力で狙わない、全力で当てにいかない。そして、全力で刻む、ということです。
サプリ 全力で外す、ですか。
今野 そうです。例えばレイアップでも、「ここに絶対に運ぶ」と決めて、そのために外していい方向、外してはいけない方向を決める。そのうえで、その範囲の中で“全力で外す”ように打つんです。
中途半端に「なんとなくあの辺」で打つから、ミスになる。だったら最初から「こっちに外す」と決めて、その通りに打った方が結果はまとまります。
守るショットほど難しい。練習していないからできない
今野 多くの人は、守りに行って「軽く打つなんて簡単」と思っていますけど、実際は逆なんです。フルスイングよりもコントロールショットの方が難しい。
フルスイングって、ある意味では“やることがシンプル”なんですよ。しっかり振る、しっかり当てる、それだけです。でも守るショットって、「どのくらい飛ばすか」「どこまで飛ばさないか」「どう外すか」まで全部考えないといけない。
サプリ 確かに、考えることが多いですね。
今野 そうなんです。しかも、そのうえでスイングの精度も求められる。
フルスイングで10ヤード飛ばす練習はみんなやるんですよ。でも10ヤード抑える練習はやっていない。
例えば、「この番手で150ヤード飛ぶけど、今日は130ヤードで止めたい」とか、「この距離を絶対に超えないように打つ」とか、そういう練習をしていないんです。
サプリ 確かに、振り幅を変えて距離の調整まではしていますけど、そうした考え方でそこまでやっていないです…。
今野 だから「刻もう」と思ったときに再現性がない。軽く打とうとしても緩んでダフるかトップするか、もしくは思ったより飛んでしまうか。どっちにしても“中途半端なミス”になる。
本当は、守るショットこそフルショットと同じくらい練習しないといけないんです。
それなのに「軽く打つだけだから大丈夫」くらいに思っている。そこにギャップがある。
サプリ なるほど…。
今野 守る方が難しいんですよ。だからこそ、本当にスコアをまとめられる人は“守るのがうまい人”なんです。飛ばすのがうまい人じゃなくて、守れる人の方が強い。
パットも同じ。“外す前提”でタッチを作っている
今野 この考え方はパッティングにもそのまま当てはまります。
「お先です」のパットって、これは“入る”という確証があって、入れにいく状態が100%まで満ちた時のタッチなんですよ。
でもそれを例えば10メートルのパットで、4メートルオーバーするくらいのタッチで打てるかというと、絶対にやらないですよね。
つまり、10メートルのパットっていうのは、みんな100%入れにいっていないんです。
もうその時点で「1メートル以内に収めたい」とか、「次をワンパット圏内に残したい」という考えがある。だからラインも大きく膨らませているわけじゃないですか。
サプリ うん、確かにそうですね。
今野 で、それが5メートルくらいになってくると、「入れにいくタッチ」と「外しにいくタッチ」の意識が半々くらいになるんです。でも10メートルになると、もう入れにいっていない。「入っちゃうかもしれない」はあるけど、「入れにいく」ではない。
ダーツで例えると、ブル(中心)は狙っているけど、外側の枠の中には入れておきたい、くらいの感覚で投げている感じなんですよ。つまり、完全に“外した後のことを考えてタッチを出している”んです。
サプリ 10メートルだと、確かに100%入れにいこうとはしていないですね。
今野 そうなんです。で、これが例えば2メートルのパットになるとまた変わってきます。それが2メートルのバーディパットなのか、2メートルのボギーパットなのかでも違う。
例えばボギーパットだったら、「もうダボでもいいや」くらいの感覚で、入れにいく成分が強くなるから、強めに打てるんですよ。
いわゆるタップイン寄りのタッチになる。だから結果的に入るんです。
サプリ ありますね、そんな経験。
今野 でも同じ2メートルでもバーディパットになると、「最悪パーで上がりたい」という気持ちが働く。そうするとジャストタッチを使い始めるんです。
サプリ これも身に覚えがあります…。
今野 それは「バーディパットをスリーパットしてボギーにしたくない」という気持ちがあるからで、タップインパーを守れる範囲の中で狙いたい、という意識が働いている。
だからすごく複雑なんですよ。人によっては、その状態って“全力で入れにいっていない”んです。言い方を変えれば、“全力で外しにいっている”状態とも言える。
サプリ グリーン上での“どうしてこうなるんだろう?”が具体的にわかってきました。
今野 だから結局、自分がその瞬間にどんな気持ちを抱いているかで、やることも難易度も変わるんですよ。
例えば、すごく消極的な自分が出てきた時に、「それでも2メートルのバーディーパットは、2パットで上がるという条件を絶対にクリアする」と決めて打つのか、それともただ「ビビって弱く打った」で終わるのか。
この差って、実はすごく大きいんです。
「全力で飛ばさないを、全力でやる」
今野 結局、ゴルフはその瞬間に何を考えているかでプレーの質が変わります。
「ワンパットを狙って外した2パット」なのか
「外したくなくて守りに入った2パット」なのか
同じ結果でも意味がまったく違う。レイアップも同じで、“全力で守った結果のミス”と
“中途半端に逃げたミス”では価値が全然違うんです。
サプリ 確かに、その違いは大きいですね。
今野 だから大事なのは、安全に行くなら中途半端にやらないこと。
全力で飛ばさない
全力で狙わない
全力で外す
これをちゃんとやることなんです。
サプリ “全力で外す”というのが印象的ですね。
今野 そうですね。一見すると逆のことを言っているように聞こえるかもしれませんが、これができるようになるとミスの質が変わります。
どこに外すかを決めて、その範囲の中で外す。それができれば大叩きは減るんです。逆に、何も決めずに「とりあえず安全に」と打つと、一番中途半端なミスになる。
「安全に行く」というのは、逃げることじゃないんです。“設計すること”なんです。
その設計をしたうえで、全力でやらないことを、全力でやる。これができるようになると、ゴルフは一気に変わってきます。
今野一哉(こんの・かずや)
JGTOツアープレーヤー。18GOLFプロデュース / キッズゴルフ代表。アマチュアゴルファーの指導やジュニアゴルファーの育成に力を注ぎながら、各ゴルフメディアで活躍中。蝶ネクタイスタイルはゴルファーへ「サービスし、尽くす」と言う意味を表す。











