プロはできることを積み上げていく

サプリ 前の日の練習だったり、スタート前の練習で、たとえばドライバーが全然当たらなかったりすると、「今日はドライバーがダメだな……」っていう気持ちでスタートしてしまうんですよ。

今野 それで、その感覚がプレー全体に影響を与えてしまう、ということですね。

サプリ はい。朝イチのティーショットも、「とりあえず置きにいこう」とか、「今日はぶん回すのやめておこう」とか、すごく消極的になったりして。そうなると、ゴルフのリズムがめちゃくちゃというか、うまく流れに乗れなくなってしまうんですよ。

今野 あるあるですね。

サプリ メンタル的な問題だと思うんですが、こういう負のサイクルにハマらないようにするには、どうしたらいいんでしょう?

今野 そういえば、江連忠さんが似たような話をされていて、すごく面白かったんですよ。
「アマチュアはフルスイングからサイズダウンしていく。でもプロゴルファーはミニマムスイングからフルスイングに向かっていく」っていう話なんです。

イメージとしては、「できることを選んで、それを少しずつ伸ばしていく」という考え方と、「ここまではできないから、じゃあそれ以下のことをやろう」という考え方。この2つでは、18番ホールで迎える結果が大きく変わる、と。

サプリ アマチュアの場合は、「ドライバーの調子が悪いからフルスイングしないようにしよう」とか、後ろ向きな選択になりがちですけど、プロは前向きな選択をしているということですか?

今野 そんな感じですね。
じゃあ具体的にどうするかなんですけど、まず「今日はドライバーダメだ!」みたいに早計しないことです。

結局、メンタル的に調子の良し悪しを決めているのって、スコアなんですよ。
よく「バーディーはプロゴルファーにとって一番いい薬」なんて言いますけど、自分の好不調を判断している基準の大半って、実はスコアなんです。

だから、たとえば「今日はドライバー苦手だな」「アイアン良くないな」って思っていても、その状態でなんだかんだスコアがまとまると、だんだんキレが良くなってくるんですよ。

たとえばティーショットもセカンドもミスしたとしても、なんとかグリーン周りまで行って、アプローチが寄って1メートルをワンパットで入れてパーだったら、「よかった!」ってなりますよね。

サプリ なりますね。

今野 そうすると、前日や直前に当たりが悪かったドライバーも、その“良かった”の中に含まれ始めるんですよ。

サプリ 確かに、入っちゃいますね。

今野 すると、朝イチのティーショットより10ヤードくらい伸びてたり、なんとなくフェアウェイにいたりする状態が起き始めるんです。

「やっぱり当たり悪いな」なんて言いながらも、次はセカンドがたまたま乗ったりして、鮮やかにパーで上がったりすると、「あれ? 今日いいんじゃね?」ってなってくる。

そうなると、「ドライバーも無理しなければ耐えられるんじゃね?」みたいな感じで次のホールに入っていくんですよ。

サプリ そうなると、「なんか当たり始めたな」って思って、ちょっと調子に乗ってきますよね(笑)。グリーン外してもボギーで上がれたりすると、「ボギーだけどドライバー芯食ったから、もうちょっと振ってみようかな」みたいになりそうです。

今野 そうそう。そうやって少しずつ、「ラフでもなんでもいいから、とりあえずコースアウトせず、2打目が打てるところにあればいいや」っていう感じでスタートしていくんです。

ドライバーがダメなら、アプローチとパットでフォローすればいいや、って考える。

サプリ アイアンがダメならドライバーで、アプローチがダメならパットやショットで……みたいに、他で補えばいいわけですね。

今野 そうです。チーム戦みたいに考えるんですよ。
「こいつが調子悪い時は、こいつとこいつでフォローしろ」みたいな感じ。

それでスコアがまとまり始めると、“全体が調子いい塊”みたいなものができ始めるんです。すると、その流れが、苦手だった分野に伝播することがある。

18ホール続けていくと、最終ホールでマン振りして快芯を食ったりするんですよ。

結局、スコアがどんどん良くなると、人って「自分は調子がいい」って錯覚し始めるんです。そうすると、朝の不安が一気に払拭されるような、思いもよらないハイパフォーマンスが出たりする。

でもスタートは、本当に“期待値1”くらいの状態でいいんですよ。そこから成功体験を積み重ねて、本来の自分のパフォーマンスまで18ホールかけて育てていくイメージです。

“今日はダメかも”と思った日は、ギアを低めから入る

サプリ なるほど。これって、「風邪ひいて練習できなかった」とか、「仕事が忙しくて全然クラブ握れなかった」とか、久しぶりのラウンドで不安な時に、ミニマムでスタートしたら意外と普通にできた、みたいな現象にも近いですね。

今野 そうですね。逆に、「これだけ練習したんだから結果が欲しい」っていう状態で、トップギアで朝イチのティーショットを打って、しかもいい当たりだったのにダボだったりすると、「あんなに頑張ったのに、なんでダボなんだ」ってなってくる。

すると、「俺のティーショット、間違ってたんじゃないか?」って不安になって、どんどんパフォーマンスが下がっていくんですよ。

サプリ ありますね……。

今野 で、OBが怖くなって、スイングがサイズダウンしていく。10だったギアを9にして、8にして……って。
18番に行く頃には、もうドライバーイップスみたいになってる。

だから江連さんの「できるところから伸ばしていく」っていう考え方は深いなと思うんです。

4日間競技なんかだと、本当にいろんな流れを見るんでしょうね。不安いっぱいで出ていった選手が優勝して帰ってきたり、絶好調に見えた選手が予選落ちしたり。

だから、前日に調子が悪くて不安なら、まずはティーショットでコースアウトしないこと。
そこからスコアが良くなるチャンスが少しずつ出てくると、苦手だった部分も底上げされてくるんです。

だから、“ギアは低めからスタート”っていうのを定石にしておくといい。特に期待値が低い日はなおさらです。

サプリ 結果や内容に目を向けるって大事ですね。

今野 そうなんです。どうしても「調子悪い」を否定したくなるんですよ。
「イップスじゃないですか?」って言われても、認めたらゴルフできなくなりそうだから認めたくない、みたいな。

でも、本当に強い人って、「怖い」って言える人なんですよ。
「怖いからこうする」っていう選択ができる人。そういう人が、本当の意味で泥臭くて強い人なんだと思います。

だから、下から上げていこうぜ、って話なんです。
全力で振るなとは言わない。でも、その全力をちょっと後ろに持っていきませんか、ってことなんですよね。

他の不安がないスキルで下支えして、スコアをまとめていく。すると、苦手だったドライバーも、アプローチも、パットも、少しずつ引っ張られて良くなってくる。

パッティングも同じなんですよ。
「今日はスリーパットばっかりなんじゃないか」って不安になることあるじゃないですか。

でもまずは、「全力でツーパットで上がる」をやる。
それで「よし、ツーパットでいけた!」っていうホールが一つできると、“スリーパットの呪縛”から解放される瞬間が来るんです。そこが出口なんですよ。

だからドライバーなら「コースアウトしない」。
アイアンなら「とりあえずアプローチできるところまで運ぶ」。
パットなら「スリーパットしない」。

もちろん本当は、「フェアウェイど真ん中に飛ばしたい」「ピンに刺したい」「ワンパットで決めたい」っていう理想はあります。

でも、それができない精神状態の時は、まず最低限のラインをクリアしていく。
そこからスコアを整えて、自信を作って、18番までに調子を戻していく。

そういう考え方ができると、朝イチの不安に引っ張られずに済むようになると思います。

今野一哉(こんの・かずや)
JGTOツアープレーヤー。18GOLFプロデュース / キッズゴルフ代表。アマチュアゴルファーの指導やジュニアゴルファーの育成に力を注ぎながら、各ゴルフメディアで活躍中。蝶ネクタイスタイルはゴルファーへ「サービスし、尽くす」と言う意味を表す。