NEWING|商品のネーミンングの妙

商品開発はドラマ!!!|今だから言える驚きのストーリー[第1回]

2021/02/03 ゴルフサプリ編集部



ゴルフメーカーの商品開発におけるドラマチックな業界裏話をメーカー勤務経験のフリーライター・嶋崎平人が語る連載企画。今回はブリヂストンがリリースした大ヒットボール「NEWING」が主役のストーリー。
GOLF TODAY本誌 No.584/68ページより

「なんでNEWING(ニューイング)なんだ!」

ブリヂストンスポーツの技術陣が今までにない、新しい3層構造の3ピースボールを開発した。その商品名がである。新しいボールは糸巻きでもない、2層構造の2ピースボールでもない、新概念の3ピースボールであった。技術陣が開発に10年以上を費やした自信作である。

アベレージゴルファーにとり、それまでの2ピースボールは飛ぶが硬い打感で、ミスヒットに弱い欠点があった。新しいボールは、発想の転換をしていた。アベレージゴルファーが求める「大きな飛距離」と「ソフトなフィーリング」、「ミスに強い」ことを実現するために、二重カバー構造で、高反発でソフトなコアとカバーとの間に、弾力性と復元力に優れた2つ目のカバーを設けた革新的な3ピースボールであった。

インパクト後の変形によるパワーロスなしに、蓄えられたエネルギーをボール初速に変え、飛びとやわらかい打感を実現した。テストでも打感がやわらかく、ヘッドスピードに関係なくミスヒットにも強く、誰にでも飛ばせると高評価であった。

発売に当たり、ブランド・商品名は重要である。商品企画部門の腕の見せ所である。

1993年、ブリヂストンスポーツは販売部門と親会社ブリヂストンが持っていたスポーツ企画・開発・製造機能を統合して、会社の体制を一新したばかり。新生ブリヂストンスポーツとしてこの大型新商品に力が入っていた。そこで、出てきた商品名が「NEWING」であった。

「なぜ!」、特に技術陣から否定的な声があがった。この商品名は曰くつきであった。「NEWING」の登場は、実は2回目であった。1回目は、この新しいボールを遡ること7年前の1987年11月「ALTUS NEWING」の名前で2ピースボールを発売した。新しい432ディンプルを採用し、高反発強化カバー、特許の配合技術で反発の良いコアを持つ期待の商品であった。ネーミングもNEW(新しい)+WING(翼・飛行)を組みあせた「NEWING」で、新世代の新感覚をもったゴルファーにアピールしようとしていた。

価格も当時の一級品の中心価格帯(700円~800円/個)を下回る600円/個に設定し、「機能性」、「ファッション性」、「経済性」まで配慮した新しいゴルフスタイルの提案で、パッケージも斬新。月間8万ダースの目標を掲げていた。商品名についても、良い名前を考えても、誰かがすでに商標を登録していれば使えない。名前の「NEWING」は幸いに発売前の6月に特許庁から認められ登録された。順風が吹いていた。満を持して11月発売し、市場でも評判になった矢先のことだった。