ジョン・ラームの全米オープン制覇!フィル・ミケルソンもそばで見守っていました
レックス倉本のGOLFアメリカンな話”ちょっと聞いて〜や‼︎”/第2回
米ツアーのテレビ解説などでお馴染みのレックス倉本氏ならではの情報をお届けする連載第2弾。今回は全米オープンに勝ったジョン・ラームについての話。勝利を引き寄せたポイント、さらにはラームが大学生の頃から交流があるというフィル・ミケルソンについてなど、ここでしか聞けない話をお届けする。
難関コースのトーリパインズゴルフコースで行われた全米オープンは、ジョン・ラームの17番、18番の劇的な連続バーディによる逆転優勝となりました!ラームのパフォーマンスもとびきりのものでしたが、18番グリーンを囲むようにビッシリと入ったギャラリーたちの大きな歓声を久しぶりに聞いて、その声にも鳥肌が立った最終日。「この勝利はセベのため」「僕はカルマを信じているんだ」という優勝が決まった直後のラームの言葉がすごく印象に残ります。
そんな最終日、ラームは素晴らしいプレーがいくつもありましたが、私がいちばん興味深く見たのが最終ホール18番グリーン横からの3打目のバンカーショット。トップに追いつくためには、どうしてもバーディを取らなくてはならない状況。ピン方向は下り傾斜、すぐ奥には池が目に入る。ラームはピン方向にではなく、ピンの右に向かってバンカーショットを放ち、結果的にそのバーディパットを決めてトップに並びました。
ここに彼のパワーゴルフだけでない、考え抜いたコースマネージメント力と冷静に状況を判断できるメンタル面の成熟を見ました。あの状況なら、本人は17番でバーディーを決め、まるで自分がスーパーマンになったかのような感覚になり、18番のグリーン横からのバンカーショットもピンに向かってミラクルショットを放てると思い込んでもおかしくありません。
特に、もともと『自分ができる』と思ったら、無謀なショットをすることのあったラームだから、寄る確率がわずかなショットをする可能性も十分にあった。そこを敢えてより安全な場所へボールを運ぶことに踏みとどまったのは、これまでにギャンブルをして失敗してきた経験値が生かされているんじゃないでしょうか。さらに、ピンの右へボールを運ぶという結論を出したのには、そのほうがトーナメントに勝つ確率が上がることを計算していたんだと思います。
私の大まかな計算ですが、左足下がりからのライからピンを狙って1メートル以内に寄せる可能性は10%、右サイドに安全に打ち5メートル前後のバーディパットを残す確率は70%。5メートル前後のパットを決める確率が仮に10%としたら、バーディを取れる可能性は7%。しかし、ボギーを打つ確率はほぼなし。
うまくいけばプレーオフに進める。反対にピンを狙った場合は、1メートル前後につく確率が10%。それでもそのパットを入れる確率は50%以下。すなわち、5%以下しかバーディを取れる確率はない。そして、ボギー以上のスコアで終わる確率がかなり高くなる。すなわち、プレーオフの可能性すらなくなる。仮に、プレーオフとなった場合は、勝つ確率は50%。大まかな数字だけどどちらが勝つ可能性が高いかは明確です。しかし、最終ホールでなかなか冷静にはなれなく、ついついスーパーショットに挑むのが全ての選手の心理だと思うし、ギャラリーも望んでいたはず。しかし、冷静に状況を分析し、決して格好良くはないけど勝利への最善の方法を選択したことは、まさに彼のゴルフが円熟期に入ってきた証明とも言えます。
ラームの優勝をそばで見守っていた面々の中にフィル・ミケルソンがいました。実はフィルの弟のティムはラームのアリゾナ州立大学時代のコーチであり、ラームがプロ入りするとともに大学のコーチを辞めて彼のエージェントになった関係で、フィルとは大学時代からの付き合いらしい。実はフィルの大学時代のコーチのスティーブ・ロイもフィルがプロ入りするとともにフエージェントに転身している。こんなコンビはそんなに存在しているわけではなく、いかにフィルとラームが凄い逸材だったかが伺えます。この妙な関係のふたりの活躍にますます注目は集まります。