古江彩佳の強さの根源は、子供の頃からの“根拠のない自信”

ゴルフを始めたときから「私はゴルフをするプロになるために生まれてきた」と思っていた

2021/10/18 ゴルフサプリ編集部



東急セブンハンドレッドクラブ(千葉県)で行われた富士通レディースは、降雨によるコースコンディション不良により17日の最終ラウンドが中止となり、競技は36ホールに短縮。通算12アンダー首位で並んでいた古江と勝みなみのプレーオフのみが行われた。

自分の武器を生かした鮮やかな優勝劇を、“えってぃ”こと古江彩佳が演じて見せた。

16、17、18番の3ホールストロークプレーで決着がつかなければサドンデスと言うルールで始まったプレーオフ。風雨の強い中での戦いは、互いに一歩も譲らないアグレッシブなものだった。

勝負を決めたのは2ホール目の17番。182ヤードと長い設定になったパー3で5Wを持った古江は、左上2メートルのバーディーチャンス。勝も上から20メートルのパットをナイスタッチで寄せてパーとしたが、古江はこれを沈めてバーディー。18番でも6メートルのパーパットをねじ込んで決着をつけた。

大会終了後のデータだが、古江の平均パット数(パーオンホール)は1.7592でツアーNo.1だ。その強みが、日本女子オープン優勝の勝相手の短期決戦のプレーオフで見事に生きた。

大切な場面で重圧を力に変える能力には長けている。2年前のこの大会にアマチュアとして出場した時にも、古江はそれを証明していた。アマチュアでありながら勝ちに行ったことを隠そうともせず、最終日はバーディーチャンスが来るたび「これを入れたらプロテスト免除やで」と、呪文のように唱えていた。結果は見事に優勝。プロテスト免除ですぐにプロに転向している。

会社のコンペに出場するために練習場に行く母についていったのは3歳の時。大人用の長いクラブを振らせてほしいとせがんだ。やってみるとボールに当たったのが楽しくて、4歳の誕生日に子供用クラブ3本セットを買ってもらった。夢中になる娘のために、父は雑誌やビデオなどで勉強してくれた。ツアー1勝の金山和雄が練習場にいたので「教えてください」と頼んでくれたこともある。だが、金山は言った。「この子はほっといて自由にやらせといたらいい」。それほど、楽しそうにボールを打っていたのだろう。

自由に楽しむ一方で、ゴルフを始めたときから、こう思っていた。「私はゴルフをするプロになるために生まれてきた」。大きくなってからそう母に言われたことを笑って振り返っていたが、古江の根底には、今でもこの気持ちがあるのかもしれない。幼い日々の“根拠のない自信”は、日々の努力と経験によって、根拠のあるものに変えられてきた。

古江は、近い将来米ツアーで戦うことを決めてプレーを続けている。日本以上に最後まで攻めないと結果が出せない舞台でプレーするためには、今大会は絶好の試金石となったはずだ。

強気と、正確なパッティング。大きな2つの武器を手にした古江は、現在、賞金ランキング4位。首位の稲見萌寧とは6000万円近い差があるが、逆転の可能性も残されている。今回の勝利で得たさらなる地震が、タイトル、そして米国行きへと背中を強く押してくれたに違いない。

文/小川淳子
写真/Getty Images