日本のギャラリーを熱狂させた松山英樹の技の深み
レックス倉本のGOLFアメリカンな話”ちょっと聞いて〜や‼︎”/第12回
ZOZOチャンピオンシップの松山英樹
松山英樹の優勝で幕を閉じたZOZOチャンピオンシップ。マスターズチャンピオンとしての強さを、日本の地で日本のギャラリーに見せつけてくれました。松山選手の強さはどんなところにあるのか?長年、米国ツアーの解説を行っているレックス倉本氏が分析する。
写真/相田克己
いやー、ZOZOチャンピオンシップは素晴らしい試合になりました。初日からスタートダッシュをかけた松山選手が最後まで試合を引っ張り、最後は2位に5打差をつけて堂々の勝利。松山選手の底力を他の選手に見せつけて勝った、そんな印象の試合でした。
そして、もうひとつ心に響いたことは、習志野CCに来ていたたくさんのギャラリーたちの素晴らしい応援ぶり。何より海外から来ていた選手たちにも大好評のフェアーで熱い声援だったことで、週末松山選手と一緒にプレーした普段はもの静かなトリンガーリ選手もその声援に応えるパフォーマンスを何度もしてしまうほどで米国メディアでも大絶賛。日本人として私も誇らしい気持ちになりました。
今日はそのZOZOでの松山選手のプレーを振り返りながら、松山選手の底力はどんなところにあるのかを(僭越ながら)少し私なりに探ってみたいと思います。まず、今回の勝因ですが、何よりも他の選手と比べて松山選手が格上だったということ。それから、2019年大会もそうだったのですが、スター選手が初日にいいスタートダッシュをきったら、その後難しいコースセッティングの習志野CCではトップグループを走っている選手たちが有利なこと。2019年大会ではタイガーが初日はトップスタートし優勝、今回は松山選手が2位スタートで優勝。習志野は難しいPAR4が数ホール続く中、10月開催でボールも飛ばなくなるし、最終日に向けてコースも固くなってくるからスコアーも出しにくくなる。そんな中でスター選手が初日から飛び出すと最後まで勝ち抜く可能性はグッと上がります。なので、松山選手が初日に良いスタートを切ったことが1番のアドバンデージだったと思います。さらに、最終日のバックナインで実力をいかんなく発揮したことで勝利が確定しました。
松山選手、今回はスタート前から調子は良くない、ということをインタビューで答えていました。これまでも同じようなコメントが試合前後で聞かれることもあったのですが、私が思うに、これは松山選手のユニークなところと言っていいのですが、松山選手は試合で優勝争いするだけの実力はすでに十分持っているのですが、それ以上に彼が求めていることが高いので常にそういう課題に取り組みながら戦っていると思うんです。より高いレベルのゴルフを追求することが試合に勝つことよりも優ってしまうことがあって、だから無茶苦茶調子が悪いというよりも、自分ができないことに対するフラストレーションで結果的に成績につながらなかった、ということはあったと思います。それが彼のプレースタイルだし、そういう積み重ねがあるからこそ、要所要所で素晴らしいプレーを発揮でき、彼の底力の土台を作っているのだと思います。ただ、今回の習志野では初日から松山選手は大ギャラリーを引き連れてのプレーとなったことで、自分のプレーの内容以上に結果を残す方に自分の頭がすっと移行するマインドセットがあったのではないでしょうか。