自分に厳しい完全主義者!稲見萌寧がここまで強くなった理由

ツアーで1勝しかあげていない頃に「賞金女王は当たり前」と発言!

2021/11/15 ゴルフサプリ編集部



伊藤園レディスで2021年8勝目をあげた稲見萌寧

賞金王争いのトップを走る稲見萌寧。伊藤園レディスの優勝で僅差に迫ってきた古江彩佳との差を広げた。ここまで強くなれた理由は何なのだろうか?まだツアー1勝しかあげていない頃の発言から振り返ってみた。

賞金女王は当たり前。通算30勝して永久シード選手になる。初優勝は単なる通過点。すべて稲見萌寧の言葉だ。

9打差圧勝を飾った伊藤園レディスが2021年8勝目。東京オリンピックの銀メダリストにもなり、22歳にして通算10勝を挙げて賞金女王にまっしぐら。そんな今なら、さほど驚くにはあたらない。

しかし、これの話を聞いたのは、コロナ禍、試合がことごとく中止になった2020年前半のこと。稲見はまだ2019年センチュリー21レディスで1勝を挙げただけの頃だった。それでも、不思議とビッグマウスには全く聞こえなかった。これだけのことを心に決めながら「遠い目標はダメなんです。近い目標を立てて、どうするかを考えていくタイプ」という言葉のせいだろうか。それともひたすら練習に打ち込む姿のせいだったろうか。

2020年に試合が再開されると、まずはスタンレーレディスで1勝。2021年になるととんでもない勝率で一気に五輪の日本代表の座を勝ち取り、銀メダルを手にしたのは今更説明するまでもないだろう。

その裏には、自分に厳しい完全主義がある。同時に、それで自分を追いつ過ぎることをすでに経験し「ミスの許容範囲を広くする」と、試行錯誤を繰り返してきた姿がある。

小祝さくらを抜いて賞金ランキング首位に立ったのは、9月の日本女子プロゴルフ選手権に勝った時のこと。終盤にきて4戦3勝の古江彩佳に猛追されて、約400万円差に肉薄されたのが、1週前のTOTOジャパンクラシックだった。それでも、ランキング首位は譲らない2位を死守。続く今大会優勝で、再び差を広げている。

「賞金女王は当たり前」という稲見と「意識しない」と言い切ってシーズン終了後の米ツアー挑戦に目標を置く古江。タイトルを争っている選手が、これほど毎週のように優勝争いを繰り広げるシーズンは珍しい。心身ともに力尽きたり、プレッシャーに押しつぶされそうになって、他の選手が割って入ることが多いからだ。

ほとんどが優勝争いでのタイトル争いが続くのは、見ている者にとっては目が離せない最高のもの。このまま最後まで手に汗握る戦いを見せて欲しいものだ。

その一方で気になるのは、シーズン終盤にきて稲見がひどい腰痛に見舞われていることだ。プロアスリートに故障はつきものだが、まだ22歳と先は長い。

猛練習が身上の上に、試合があるのは当たり前ではないというコロナ禍での意識の変化。さらに東京五輪前後の超ハードスケジュールなど考えられる理由はたくさんある。1試合棄権して1試合欠場。その後は痛み止めを使いながらの連戦で踏ん張るラストスパートの影響が、将来に残らないことを心から祈りたい。海外志向はあまり強くなくとも、五輪で銀メダルを獲得した実力は、メジャーの舞台でも優勝争いができる可能性を秘めているのだから。

文/小川淳子
写真/Getty Images