「また強くなって帰ってこられたらカッコイイ」と成田美寿々は常に前向き!

大王製紙エリエールレディスオープンで予選落ちしても「QTに向けて自信になりました」

2021/11/22 ゴルフサプリ編集部



大王製紙エリエールレディスオープンに出場した成田美寿々

成田美寿々がシード権を失った。賞金ランキング102位、メルセデスランキング98位。どちらでも50位以内に入れず2012年に賞金ランキング27位に入ってから8シーズン、守り続けていた賞金シードから陥落した。QTから出場権を得ての再起を狙う。

勝負の世界は残酷だ。2020‐2021年は2年越しのロングシーズンとなったがこれは異例中の異例。基本的には1年毎に、出場権が争われる。過去に何勝していても、永久シードを手にしない限り、結果が出なくなれば試合に出ることすらままならなくなる。QTというチャンスは残されているものの、シードの有無で天と地ほどの違いがある。成田は今、その現実を全身で受け止めているに違いない。だが、それを糧にして、次に進むことも考えているはずだ。

理由は簡単。こんな状況でも、思い出されるのは力強い前向きな言葉ばかりだからだ。「『ここまで(結果が悪い方に)いった人間がまた強くなって帰ってこられたらカッコイイな』って思ってました」と聞いたのは、12試合中、4試合しか予選通過できなかった2020年を振り返った時だった。

エリエールで予選落ちしてシード落ちが決まった後も「QTに向けて自信になりました」と、口にしている。

プロ入り間もない頃から、オリンピック出場とメダル獲得を宣言していた。ゴルフがオリンピック競技として復活することが決まったのは2009年10月。毎週、試合があるゴルフの世界ではオリンピックを目標に掲げる選手はまだ少なかったが、成田は「スポーツではオリンピックが一番の名誉」と言い切っていた。2013年に2020年大会が東京で開催されることが決まると「東京オリンピックで金メダルを取り、次の日に引退する」と若者ならではの大胆な発言も飛び出した。

しかし、東京五輪は新型コロナウイルス感染拡大で1年延期され、五輪が開催された2021年は、成田にとって厳しい年となってしまった。メダルどころかオリンピック出場もできず、追い打ちをかけるようにシード落ち。腰痛を抱え、練習が思うようにできなかったのが一番の原因だが、2020年には自己ワーストの『92』を叩いたこともある。悔しさに涙を流すだけ流した後は開き直り、着実に復活への歩みを進めることを決めた。

ゴルフを始めた頃から、父、俊弘さんがすべてをサポートしてくれていたが、そこから精神的に自立することを決めたタイミングでのシード落ち。しかし、ゴルフにも人生にも必要だと判断しての決断は、時間がかかっても大きく成長するためのステップになるはずだ。

次々と若い選手が参入し、すぐに結果を出す現在のツアーは“新陳代謝”が激しい。成田はまだ29歳になったばかりだが、ツアーの中ではすでに中堅か、それ以上のポジションにいる。

しかし、今回シードを獲得した中で最年長の大山志保が44歳なのを見てもわかるように、ゴルフは長く競技ができるスポーツだ。まだまだ復活の余地は残されている。2024年パリ大会、2028年ロサンゼルス大会と、オリンピックで戦うチャンスもある。

どん底から這い上がり、復活優勝した選手たちの姿を見て感動し、自らを省みて「神様がまた一皮むける機会をくれたんだな」と思ったという成田だからこそ、再びスポットライトを浴びる日が待ち遠しい。すでに着手していたトレーニングも体を痛めないスイングづくりも、コツコツと積み上げているのは、少しずつ結果が出てきたことでもわかる。その日のための苦しい助走が、さらに大きなチャンスを生むために。