藤田さいきは夢を“正夢“にするのは自分と意識して”次“を求め続ける
フジサンケイレディスでトップと2打差の2位フィニッシュ!
写真は2022年ダイキンオーキッドレディスのもの(写真/相田克己)
経験を重ねれば重ねるほど、楽しさも苦しさも増していくのがゴルフ。フジサンケイレディスで2位だった藤田さいきのプレーぶりは、これを体現しているようなものだった。
川奈ホテルGCの名物ホール17番で、初日にホールインワンを達成。500万円の賞金がかかっていたことで注目が大きくなった藤田さいき。しかも、ここでホールインワンをする夢を見たことがあると言う。時期は8~9年前と、少し前のことで、夢では5番アイアンだったクラブが、現実では6番アイアンという違いはあるものの、球筋などは似ていたという“正夢”だった。
ホールインワンというプロにとっても特別な出来事を、川奈の17番(通常営業では16番)という特別なホールでできたという状況だったとはいえ、藤田はこの日だけでなく終始、楽しそうにプレーをしていたのが印象的だった。
次から次へと若い選手が活躍するツアーで、シード落ちしてもそこから這い上がり、今年はシード選手として復活。3位タイで最終日を迎えた今大会は、11年ぶりとなるツアー6勝目の絶好のチャンスでもあった。
初優勝がかかる首位の高橋彩華とは2打差。前2日間とは打った変わり、冷たい雨のコンディションと、重圧にバタつく高橋を尻目に、落ち着いたプレーと変わらぬ笑顔で優勝争いを繰り広げた。
結果的には、途中で重圧をはねのけた高橋に2打差2位に終わったが、優勝争いという究極の舞台での自らを振り返る話もまた、奥深い。「すごいいい感じだったんだけどなぁ。残念。途中からハイになってしまって。イケる。って優勝への気持ちがあふれ出てしまって、1クラブ(番手を)下げてもオーバーするくらいになってしまって。でもすごい楽しかったので、これだけ優勝争いが楽しめるようになったなら大丈夫」と、最高の笑顔で大会を終えた。
自分の心身のコンディションと相談しながらプレーする術を知っているのはベテランならでは。「マジメに練習をし過ぎて体もメンタルも持たないな、と思って」と、シーズンが始まててからペースダウン。KKTバンテリン杯6位、フジサンケイ2位と、着実に上位で戦える状態になっている。
最終日のプレーもの富士通レディースから11年。実は、その後、優勝シーンの夢も、これまでに何度も見ている。「何度も優勝カップを掲げているのを観ています。でも、まだ(優勝)しませんね」。そう言いながらも、いつか勝てる、という思いを最大のモチベーションに戦い続ける。試合に出場し、優勝争いに加わらなければ味わえない最高の楽しみを知っているからこそだ。夢を“正夢“にするのは自分自身だと、はっきりと意識して、藤田は笑顔で”次“を求め続けている。