「軽量グリップ」で増やしたバランス数値は役に立つのか

「飛距離の階段」ナゼ作れない?―「バランス理論」の盲点|第5回

2022/06/04 ゴルフサプリ編集部 戸川 景



PHOTO/USGA®️ 2022 U.S. Women's Open

シャフト重量を軽くすると、バランス数値は下がる。
バランス数値が下がれば、振り心地が頼りなくなる?そこでグリップ重量を減らせば、バランス数値は上昇、元通りの振り心地に……なるはずがない。シャフトもグリップも軽くなっているのだから。

「バランス理論」は原則的にシャフトとグリップの重量が揃っていないと成り立たない。この事実を認めず、誤解したことから“振りにくい軽量クラブ”というおかしなモデルが生まれたのだと思う。

「バランス理論」全盛の1970年代に普及し始めたカーボンシャフト。スチールより30g前後も軽くできたのだから、通常なら振りやすくなるはず。ところが各メーカーは「バランス理論」に従い、シュアフトが軽くなったぶん、ヘッドを重くするという“愚行”に走ってしまった。「ヘッドを重くしても総重量が軽いぶん、ヘッドスピードも上がるはず。打球エネルギーにはヘッド重量も効くから、もっと飛ばせる」と考えたのかもしれない。

だが、クラブ全体の動的モーメントは、ヘッド重量の影響が大きい。バランス数値を考慮してヘッドを重くしたモデルは、アイアンも含めて“振りにくく”なってしまった。現在の軽量モデルはヘッド重量を抑え、グリップの軽量化でバランス調整し、振りやすくしている。