ゴルフに勝負ゴトを持ち込むとスコアは良くなる?それとも悪くなる?

ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第23回

2023/07/03 ゴルフサプリ編集部 篠原嗣典



ゴルフの虜になってもうすぐ半世紀。年間試打ラウンド数は50回。四六時中ゴルフのことばかりを考えてしまうロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が、コースや色々な現場で見聞きし、感じたことを書いたのが【毒ゴルフ・薬ゴルフ】です。大量に飲めば死んでしまう毒も、少量なら薬になることは、ゴルフにも通じるのです。

撮影/篠原嗣典

「負けた悔しさで練習するようになるし、勝負することで、より仲良くなれるから」
なんていうセリフは、昭和のゴルファーには当たり前だったような気がします。

賭博は犯罪です、と目くじらを立てるのは早計で、日本の司法判断では、食事を奢ったりする範囲の賭け事は賭博に当たらない、という最高裁判例があるからです。

とはいえ、令和のゴルフ事情としては、嫌がっている相手に強制するのはハラスメントとして、言語道断です。

『ニギリ』という隠語は、相手と条件交渉をして、双方に納得したときに「いざ、勝負!」と握手をしたことから発生した言葉であり、ニギるという動詞としても使うのです。

条件が合わなければ、不成立ですが、同じ組内で団体勝負のフォーマットだったりすると断りにくい現実もあります。
性格的に、賭け事が合わない人もいます。嫌な場合は、和を乱してゴメン、なんて謝りつつ、辞退しても、どうにかなるものです。

ニギらないと上手くならない説については、正直に書くと、自らの経験からも一理あるとも思います。しかし、ニギらなくとも勝負は出来ますので、それで十分だとも思うのです。

若者ゴルファーをコースで観察していて、なんだかんだで、昭和ゴルファーから影響を受けているなぁ、と思うシーンが、昨年ぐらいから二つあります。
一つは飲酒です。朝から缶チューハイで乾杯していたり、プレー中も、ゴルフが飲酒をしながら出来る珍しいゲームであることを謳歌している若者を見かけるようになってきました。

もう一つは、ニギリです。
「タテはハンディが難しいからやめるとして、ドラコンとニアピンはやろうよ。お前とは、サシの勝負ね」
というようなセリフを若者ゴルファーが言っているのをスタート前に耳にすることが増えました。

頼もしいと思う反面、悪いことほど、すんなり伝承される傾向があることも知っているので、少し複雑です。

ゴルフのニギリは種類も多いですし、条件も様々です。
ゴルフの黎明期の歴史を紐解くと、ニギリがあってこそのエピソードもあり、ニギリはゴルフの一部だという解釈もあります。

ゴルファーとして、ニギリには注意点があります。最初に説明しましたが、合法の範囲のことです。
ニギリは刺激的で、楽しいものなので、注意しないと感覚が麻痺してしまうのです。ご飯を奢る範囲は、特別な食事ではなく、一般的な食事のことです。
高額なレートで、ヒリヒリしなければ興奮できない、と考えるようになったら、それは病気の始まりです。

僕はたくさんの尊敬できる勝負師とニギってゴルフをしてきましたが、彼らの中に共通していた哲学がありました。
「100円も、1万円も、ドキドキは一緒」
ご飯代の範囲以内で遊べなければ、ゴルフでニギリをする資格はないのです。