“コンパクション”の意味を知らなければ、グリーンの本当の状態は分からない

グリーンの状態を判断するとき、ほとんどの人はスピードだけを気にしますが、それだけでは完璧とはいえません。スピードとともに大事なのが、グリーンの硬さ、いわゆる「コンパクション」です。硬いか軟らかいかはパッティングだけでなく、グリーンを狙うショット全てに影響を及ぼす大事なもの。しっかり理解しておきましょう。
コンパクションの数値が高いと、グリーンのスピードはさらに上がる
グリーンの状態を確かめるとき、最初に、「速いか、遅いか」というスピードを判断しますが、もうひとつ重要な要素があります。それは、グリーンの硬さ(コンパクション)です。
グリーンが硬くなるとどうなるか。例えばパターでボールを転がした場合、軟らかいグリーンよりも転がりが良くなり、スピードも速くなります。また、グリーンを狙ったショットの場合は、着弾したあとのバウンドが大きくなり、グリーン上で転がる距離が多くなります。
だから、硬いグリーンでパッティングをする場合は、「距離感をしっかり合わせる」ことが大事になってきます。また、アプローチでは、「スピンが効きにくいので、ランニングアプローチでピンを狙う」「上りラインを残すようにする」といったことが大事になってきます。
さらに付け加えれば、アイアンショットで硬いグリーンに着弾させる場合は、ピンをデッドで狙わないようにするのが基本。硬いグリーンのコースで行われることが多い全英オープンでは、直接グリーンを狙わず、グリーン手前に落として転がすというシーンが見られますが、あのような攻め方が必要になってくるのです。

「本日のグリーンのスピードは10フィートです」。それって速いの? 遅いの?
キャディマスター室の前に、「本日のグリーンのスピードは10フィート」と書かれているボードを見て、「フィートって何のこと...
では、グリーンが硬いか、軟らかいかはどうすれば分かるのか? 各コースでは専用の測定器を用いて、どれくらいの硬さにするかを決めてグリーンを整備していますが、その硬さは数値化されています。
その単位には、「絶対硬度(単位:kg/㎠)」と「指標硬度(単位:mm)」とがあり、どちらも数値が大きいほどグリーンは硬くなります。
コンパクションの数値とグリーンの状態は次の通りです。
●絶対硬度:~10、または指標硬度:~23
軟らかい。アイアンショットではピッチマークがしっかり付き、高い球は止まりやすい
●絶対硬度:11~12、または指標硬度:23.5~24
標準的な設定。通常営業ではこの値に設定されることが多い
●絶対硬度:12~14、または指標硬度:24~25
やや硬めで、プロのトーナメントはこの値に設定されることが多い
●絶対硬度:14~、指標硬度:25~
ピッチマークがほとんど付かないほど硬い。着弾したボールは大きく跳ねる
スタート時点と終盤とではグリーンの速さが変わることも頭に入れておこう
スピードとコンパクションを確認し、それをもとに練習グリーンでチェックする。これでグリーンの状態はある程度把握できるのですが、芝は生き物。スタートからホールアウトまで常に同じ状態のままというわけにはいきません。天候や気温、湿度、風によって刻々と変化するということも頭に入れておきましょう。
例えば、気温が高く、湿度が低い日は芝生の成長が活発になり、グリーンは時間が経つにつれて遅くなります。逆に気温が低く、乾燥している日は、グリーンが速くなることもあります。
また、雨が降ると地面が柔らかくなり、ボールの転がりが悪くなります。特に大雨の後は、グリーンのスピードが著しく下がります。
さらに自然の影響は、グリーンが設置されている場所によっても変わってきます。例えば日当たりのいい場所にあるグリーンは、芝生が成長してグリーンが遅くなると行ったように。
そういう変化を感じながらプレーをするのも、ゴルフの醍醐味のひとつ。パッティングの際は、結果だけを求めるのではなく、打つ前に転がりを予想し、その通りに転がったかどうかということも楽しんでみてはいかがでしょうか?
文/真鍋雅彦
1957年、大阪生まれ。日本大学芸術学部卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。
1986年に退社し、フリーライターとしてナンバー、週刊ベースボール、ラグビーマガジン、近代柔道などで執筆。
ゴルフは、1986年からALBAのライターとして制作に関わり、その後、週刊パーゴルフ、週刊ゴルフダイジェストなどでも執筆。現在はゴルフ雑誌、新聞などで記事を執筆するほか、ゴルフ書籍の制作にも携わっている。

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