2022全米オープンを制したマシュー・フィッツパトリックのすごさとは!?
レックス倉本のGOLFアメリカンな話”ちょっと聞いて〜や‼︎”/第27回
これぞメジャーの試合と思わせる素晴らしい全米オープンでしたね。数時間にわたる長いテレビ中継も睡魔に襲われることなく最後までファンの見たい気持ちを引きつけました。優勝したマシュー・フィッツパトリック選手、穏やかで大人しい印象の選手でこれまではあまり注目されることはありませんでしたが、実は凄い選手なんです。今日はそのフィッツパトリック選手の凄さをスタッツなど交えてお伝えします。
開催コースのザ・カントリークラブはボストンの近郊にあります。そのボストンはアイルランド系の移民がたくさんいる場所なので、マキロイ選手はもちろんアイルランド系の選手達への声援が一際大きかったようです。そして、フィッツパトリック選手はその名前からアイルランド系のイギリス人なのですが彼が優勝したことで地元のファン達も大喜びでした。
さて、フィッツパトリック選手ですが2013年に今回開催された同じコースで全米アマチュア選手権に優勝。なので今回の優勝は同コースで全米アマと全米オープンを勝ったジャック・ニクラウス(ペブルビーチで1961&1972)に次ぐ史上2人目の快挙になりました。
その翌年プロ転向し主にヨーロッパツアーで活躍。2018年くらいからアメリカツアーに本格参戦。彼がプロ転向の翌年フロリダのアーノルドパーマー招待に推薦枠で出場していたときに実は私は彼のプレーを見ていました。
練習ラウンドをマキロイ選手とプレーしていましたが、その時の印象は身体の線が細くて、ショットもそれほど飛ばずヒョロヒョロとしたボールを打っていました。2018年の彼の平均飛距離は287yでツアーで151位。どちらかと言えば飛ばない選手。ただ正確性が66%、52位でトータルドライビングが全体で35位で正確性を武器に戦っていました。
2020年の全米オープンで彼に転機が訪れます。デシャンボーが圧倒的な飛距離で優勝をしたときです。フィッツパトリックもかなりいいプレーをしていたのですが、その時にデシャンボーと自分とでは明らかにセカンドショットで持つクラブが違うことを目の当たりにし、ゴルフはより飛距離を追求する方向に変わってきたと認め、自分もこれから飛距離を伸ばす、と宣言。そして、様々な飛距離アップ作戦を実行。中でもスピードトレーニングに重点を置き、シャフトの先に数種類の錘がついたスティックを宗教がかったくらいにとにかく振っていました。
そして、2020年には平均飛距離が298yで121位に、2022年現在は298yで108位と着実に飛距離を伸ばしてきました。今回の全米オープンに至っては平均飛距離309yで16位です。彼の凄いところは、飛距離アップをしているにもかかわらず、正確性が落ちていないということ。
2020年の正確性は64%で40位、トータルドライビングも全体で10位にアップ。多くの選手は飛距離を追求するあまりに正確性が悪くなったり身体を壊すなどで成績を落とすというジレンマに悩まされていますが、フィッツパトリックの場合は、クラブをきれいに身体の周りで回すように振るタイプで、スイング中に体に変な歪みがないスイングなので、このスピードトレーニングは逆にクラブを効率的に振らせることにもなって彼のゲームに良いふうに働いたのではないかと思います。
全米オープンでの彼のスタッツです。飛距離は先に示した通り。フェアウェイキープ率39/56で5位、GIRは52/72で1位、パッティングは1.69で50位T。これを見てもわかるように、2020年にデシャンボーを見て飛距離アップに取り組んできたことで勝ち取ったボールストライキングの良さが勝因と言っても良いでしょう。
それからもうひとつ、フィッツパトリックが凄いことを表すスタッツがあります。ストロークゲイントータルと言って、これは全てのショットのトータルにおいて他の選手と比べて何打良いか悪いか表す数字なんですが、全米オープンの前の時点でフィッツパトリックが2位なんです。
少し地味であまり目立たない選手なのですが、実は彼は今シーズンめちゃくちゃ良いゴルフをしているんです。とても中身の濃いゴルフをしていて、それを今回もやり切った、ということなんです。次のメジャー、全英オープンでもフィッツパトリックの活躍は期待できますね。
まだまだここに書ききれなかった、さらに詳しい話の続きは、下記「レックス倉本のBYTC GOLF」のYouTube動画で引き続きお楽しみ下さい。Podcast、Anchorでも配信中。「レックス倉本」で検索してください。