乗用カートの上座下座にガッチガチにこだわりすぎると、逆に気遣いができないゴルファーだと思われる
ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第28回
ゴルフの虜になってもうすぐ半世紀。年間試打ラウンド数は50回。四六時中ゴルフのことばかりを考えてしまうロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が、コースや色々な現場で見聞きし、感じたことを書いたのが【毒ゴルフ・薬ゴルフ】です。大量に飲めば死んでしまう毒も、少量なら薬になることは、ゴルフにも通じるのです。
撮影/篠原嗣典
例えば、4人でゴルフをするとして、乗用カートには4つのキャディバッグが積まれています。
左から、1番目と数えて4番目までの位置で、その日のゴルフを占う、という人がいます。朝一番の運試しです。
3番目の位置がラッキーという人もいれば、1番目のときがスコアが良いという人もいます。
根拠があるわけではなく、その位置だったときに、ベストスコアが出たり、良いことがあったりしたというような個人的な思い入れに過ぎない他愛のない占いごっこです。
ゴルファーは弱い生き物で、そんな不確かなことにでもすがりたいのです。一緒になって占うのも良し。もしくは、黙って見守るのがゴルファーとしての粋というものです。
「バカだね。1番目が上座だから、1番目が一番に決まっているんだよ」
と一笑する野暮なオールドゴルファーがいます。それを言っちゃお終いよ、です。
キャディバッグの位置に、上座があるのは事実です。
乗用カートの場合は、1番左の位置が、右利きのゴルファーの場合、クラブの出し入れがしやすいという理由で上座になります。接待する相手が左利きであれば、左端の4番目の位置が上座になります。
キャディー付きの歩きのゴルフのときは、電動カートの中央の2つの位置が上座だという考え方もありました。キャディーの目の前にあることと、端っこは下座に繋がるという考え方があるからです。
ビジネスマナーの奥義のような世界の話になると、企業によって違いがあったり、関西と関東では違ったり、ということも多々ありました。
当事者は大変だったと思いますが、文化として観察すると非常に面白かったのです。