グローブライド オノフ赤FF アイアン試打評価｜高橋良明レビュー

2020年秋に発売されたグローブライドの『オノフ赤FFアイアン』（以下オノフ赤FF）はレギュラーモデルの『オノフ赤アイアン』（以下オノフ赤）の特色である飛距離性能とやさしさをさらに進化させたモデルです。歴代オノフアイアンの中でも「飛びのスペシャリスト」といっていい『オノフ赤FF』の実力に自他ともに認める「試打のスペシャリスト」高橋良明が迫ります。

グローブライド オノフ赤FF アイアンの総合評価

グローブライド オノフ赤FF アイアン

飛距離性能	★★★★★（5/5）
操作性	★★★☆☆（3/5）
打球感	★★☆☆☆（2/5）
上がりやすさ	★★★★☆（4/5）
総合評価	★★★★☆（4/5）

グローブライド オノフ赤FF アイアンの特徴

『オノフ赤FF』は、やさしく飛ばせるアイアンとして評判の『オノフ赤』のコンセプトを継承しつつ、さらに飛距離性能とやさしさを追求したモデルです。

素材や構造は『オノフ赤』と基本的に同じですが、ロフト角が『オノフ赤』よりも1番手ずつ立っていて、「飛び系アイアン」を超える「ぶっ飛び系アイアン」のカテゴリーに区分けされます。

また、ヘッドが一回り大型化され、パワートレンチやフルコアグルーブなど「オノフ」独自のテクノロジーも『オノフ赤FF』専用設計とされたことでオフセンターヒットでの飛距離ロスが少なくなっていることも特徴です。

特徴1. 実打点で最大にたわむフェースが飛距離アップを実現

一般的なフェースではセンターのたわみがもっとも大きく、反発力も最大になります。一方で地面のボールを打つアイアンの場合、打点はフェースの下部に集中します。アイアンの最大たわみ位置と実打点のずれを解消するために『オノフ赤FF』にも「ダイレクトリパルジョンフェース」という技術が採用されています。

『オノフ赤FF』のLカップフェースは中間から下部が強度限界の薄さ。フェース上部はさらに薄く、その間にパワートレンチといわれるリブを設けることで、最大たわみ点をアイアンの実打点まで下げています。そのおかげで反発効率が上がり飛距離がアップ。また、トップ気味のミスヒットでも強い球が打てるようになりました。

特徴2. 効果絶大のソールウエイト、球が上がってミスにも強い

ソール全体に110グラムものタングステンウエイトを配置。その結果として得られた深い重心と大きな慣性モーメントが最大級のやさしさの秘密です。芯を外したときでも当たり負けしにくく、直進性の高い弾道を実現。

また、低い重心により地面のボールをしっかり拾って、ロフトが立っていても球が上がります。さらに、フェース裏面のトゥとヒールに施された3本の溝がたわみエリアをトゥヒール方向に拡大。打点が左右にずれたときの飛距離ロスも最小限に抑えられます。

特徴3. ヘッドスピードも打ち出し角も上がる走り系シャフト

世界的な釣り具ブランド「DAIWA」の誇る高性能フィッシングロッドの技術を生かして作られた『オノフ赤FF』専用カーボンシャフトは重量50グラムの軽量モデル。

手元から中間部にかけての剛性変化がスムーズでタイミングが取りやすく、誰もが自然な走りを体感できるのが特徴です。

インパクトゾーンでヘッドスピードを上がるほか、メーカー自身もハイロフトアイアン用とうたっているように、ボールを拾いやすく打ち出し角を上げてくれるシャフトになっています。

グローブライド オノフ赤FF アイアンのスペック

『オノフ赤FF』のロフト角は7番で25度、『オノフ赤』は6番が同じ25度なのでちょうど1番手ストロングロフト設定になっています。

アプローチウェッジ（AW）のロフトも43度と通常モデルのピッチングウェッジ（PW）並みに立っているので、サンドウェッジ（SW＝56度）とのギャップを埋めるためにアプローチサンド（49度）が設定されています。

グローブライド オノフ赤FF アイアンを試打レビュー

いわゆるぶっ飛び系アイアンというカテゴリーの中で「オノフ」独自の世界観はどのように表現されているのか。

歴代「オノフ」を知り尽くす高橋良明が『オノフ赤FF』の飛距離性能とオノフらしさに迫ります。

当たった瞬間に飛びを体感できる強烈な弾きが爽快

まるでチタンフェースのような強烈な弾きを感じます。球離れが速く、フェースも薄いせいか打感はちょっと硬いけれどそこは好き好きでしょう。軟鉄鍛造アイアンのような食い付く打感の好きな人には不向きですが、アイアンに飛距離を求めている人にとってはとても爽快な打球感です。

いかにも飛んでいる感じがするので余計な力みがとれてさらにいい結果が出そうです。

ただし、ショートアイアンでこの弾きのよさだとちょっと不安を感じるかもしれません。自分の感覚で距離を合わせるというよりは、クラブ自体のスピン量に任せて打っていく感じになると思います。

また、芯を外して打っても弾きのよさは変わらないのでスイートスポットの広さを感じさせます。

ストロングロフトなのに番手通りの高さで打てる

「オノフ赤」よりも1番手、アスリートアイアンと比べると2番手くらいロフトが立っていることを考えると球はよく上がる方だと思います。飛び系アイアンは番手通りの高さが出るのかどうかという質問をアマチュアの方からよく受けますが、『オノフ赤FF』に限っていえば番手通りの高さで打てます。

とくに感心したのはフェースの下っ面に当たってもきれいにボールが上がってくれるところです。これは上下の打点のブレが大きいアマチュアにとっては何より心強いと思います。『オノフ赤FF』が上がりやすいのはヘッドが深低重心なだけでなく、軟らかいシャフトが装着されていることも大きな要因です。もしシャフトをカスタムする場合も軟らかめのシャフトを選んだ方がヘッドの性能を生かせるでしょう。

伸びのある強い弾道で2番手先までボールが届く

フェースの弾き感の通り、明らかに初速が上がります。ロフトもかなり立っているので球が後ろから押されるように前に飛んでくれます。スピン量も少なめで7番くらいで打つとアイアンというよりはユーティリティのような球の伸び方です。

ふつうのキャビティアイアンの7番を使って150ヤードくらい飛ばしている人が170ヤード飛ばすのも不可能ではありません。力のある人なら200ヤードをショートアイアンでねらうことも可能です。まさしく2番手上の飛びを現実にしてくれるアイアンです。また、上下左右ともスイートスポットが広く打点がバラついても平均的に飛びます。

とくにフェースの下側の当たりに強いのでボールが沈んだライでも飛距離を出しやすくなっています。

曲がりづらさを生かして真っすぐねらうのが吉

弾きがいい分、球筋を操作しづらいのは致し方ないところです。とくにフェードボールやスライスでねらおうとしたときには、球がパーンと左に真っすぐ出て、曲がる前にそのままグリーンを通過していってしまうイメージがあるので、左に打ち出すのが難しく感じます。

逆に球を右に出してドローボールを打つことはそれほど難しくありません。ただし、フェースの上の方で打つとスピン量が足りなくてそのまま右に抜けて行ってしまうことがあります。

『オノフ赤FF』の場合は下手に曲げようとしたり球を抑えたりしようとせず、シンプルに真っすぐ打っていった方が間違いなくいい結果が得られるでしょう。

グローブライド オノフ赤FF アイアンがおすすめの人

まずおすすめしたいのはアベレージ層です。打点のブレをクラブがカバーしてくれるので安定して飛ばせるようになるでしょう。アイアンの飛距離に物足りなさを感じているシニアや女性にもおすすめです。とくにアイアンは7番からと割り切っているシニアにはちょうどいいと思います。

女性はヘッドスピードが30m/s以下だとちょっと球が上がりづらいかもしれませんが、クラブの扱いに慣れてある程度振れる人ならありでしょう。『オノフ赤FF』はいわゆるお助け的アイアンの中では顔のきれいなクラブです。グースネックですが、トップブレードとリーディングエッジのラインがすごくすっきりしているので、初心者からベテランまで幅広い層が違和感なくかまえられると思います。

グローブライド オノフ赤FF アイアンの評価

使われている素材や構造は『オノフ赤』とほとんど同じですが飛距離性能は、これがオノフかと思ってしまうほど優れています。一般的なアベレージモデルと比べても明らかに優れた飛距離性能を備えたアイアンです。

ロフトが立っている割にボールが上がりやすいので、球が上がり切らずに距離をロスしている人やトップ気味のミスが多い人には最適なクラブです。スコアラインの下から1本目か2本目くらいに当たってもボールを拾って上げてくれます。トゥやヒールのミスにも強くやさしくオートマチックに飛ばせるクラブですね。バックフェースもすっきりしていてお助けクラブ的な雰囲気があまりないので、バッグに入っていてかっこよく見えるところもポイントが高いですね。

テスター／高橋良明（たかはし・よしあき）

1983年生まれ、東京都出身。2013年プロ入会。サザンヤードCC所属。ツアーに挑戦するかたわら、ゴルフ専門誌やウェブメディアでテスターを務める。毎年出る新製品をほぼ打ち尽くす試打のスペシャリスト。