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歴史的な復活劇だった、渡邉彩香の5年ぶりV!

「いまどきツアーをデータ斬り!」国内外のゴルフツアーをあらゆるデータで一刀両断 Vol.35

2020/07/19 ゴルフサプリ編集部

アース・モンダミンカップで5年ぶりの優勝を飾った渡邉彩香は、前年賞金ランキング115位からの鮮やかな復活だった。この優勝、実は前例のない驚異的なV字回復。歴史に残るほどの劇的勝利である。

歴史的な復活劇だった、渡邉彩香の5年ぶりV!

新型コロナウイルス感染拡大の影響で大幅に遅れての開幕に無観客、月曜日が最終日など、異例づくしとなったアース・モンダミンカップは前例のない復活劇で幕を閉じた。女王・鈴木愛とのプレーオフを制したのは渡邉彩香。どん底を経験してつかんだ5年ぶりの通算4勝目はゴルフファンに大きな感動を与えた。

2012年にプロ入りした渡邉は2014年に初勝利を挙げると2015年には2勝。同年は獲得賞金が1億円を超え、賞金ランキング6位と躍進した。ツアー屈指の飛距離が魅力で、次代を担うエース候補と目されていた。しかし、徐々に成績が下降。2018年にシード落ちすると、昨年は30試合に出場して予選通過はたったの7度。賞金ランキングは115位にまで落ち込んでいた。前年の賞金ランキングが100位以下だった選手が優勝した例は1988年のツアー制度施行後、渡邉で29例目である。これ自体はさほど珍しいケースではない。しかし、昨年までの28例中、初優勝またはプロ初優勝だったのが26例。ほとんどが実績のなかった選手が力をつけて優勝したというようなケースで、復活優勝と呼べるものではない。

残りの2例は米ツアーが主戦場だった小林浩美と平瀬真由美。日本ではあまりプレーしていなかったのだから賞金ランキングが低くても仕方ない。つまり、「賞金ランキング100位以下のどん底を味わった翌年に復活優勝」という意味では渡邉が初めてとなるのだ。それに、昨年までの28例はすべて優勝前年の出場試合数が全日程の半分以下だった。大半はひとケタ試合。渡邉のように通年で試合に出ていた選手は1人もいなかった。

もうひとつ「優勝経験がある選手が賞金ランキング100位以下に転落した後に復活優勝」というデータも紹介したい。1988年以降、渡邉以前には7例あるが、うち5例は米ツアー参戦や出産によって賞金ランキングが下がったもの。残る2例は涂阿玉と中嶋千尋。故障が引き金になって不振に陥るなどしたものだ。つまり、実質的には涂と中嶋の2例しかなかったわけで、実力者といえども不振で賞金ランキング100位以下にまで落ち込んでから復活するのは至難の業なのである。渡邉が成し遂げたことはまさに歴史的な復活劇。本人にとってはツアー史上最高額4320万円の優勝賞金以上に重く意味のある1勝なのかもしれない。

渡邉彩香の年度別賞金ランキング

賞金ランキング 獲得賞金
2012 146位 38万4000円
2013 46位 2074万8000円
2014 11位 7236万7610円
2015 6位 1億86万6583円
2016 12位 6277万5681円
2017 36位 3451万7713円
2018 55位 2080万8250円
2019 115位 348万5000円
2020 1位 4320万0000円

※2020年はアース・モンダミンカップ終了時


文・宮井善一
1965年生まれ。和歌山県出身。スポーツニッポン新聞社でゴルフ記者を8年間務め、2004年にフリーのゴルフライターとして独立。ゴルフ誌などに執筆のほか日本プロゴルフ殿堂オフィシャルライターとして活動している。元世界ゴルフ殿堂選考委員。

写真/Getty Images/JLPGA提供



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