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ドライバーのレングス(長さ)に制限は必要なのか?

重箱の隅、つつかせていただきます|第9回

2021/04/10 ゴルフサプリ編集部

スイング、ゴルフギア、ルールなどなど……。ゴルフに関わるすべての事柄の“重箱の隅”をゴルフライター・戸川景が、独自の目線でつつかせていただくコラムです。

GOLF TODAY本誌 No.586/70ページより

戸川景
とがわ・ひかる。1965年3月12日生まれ。ゴルフ用具メーカー、ゴルフ誌編集部を経て㈱オオタタキ設立。現在、ライターとしてゴルフのテーマ全般を手掛けている。

ドライバーのレングスに制限は必要なのか?

ゴルフクラブのレングス=長さの“標準”について尋ねられると、なかなかスパッと答えられない。わからないのではなく、複数の回答が考えられるからだ。

長さの基準が明確になり出したのは、1930年代。クラブの本数が14本以内に規制され、アイアンが数字で並べられたセットになったころだと思う。

シャフトがスチールになり、レングスもバランスも整えられるようになった時点で、アイアンは半インチ刻みで正確に作られるようになった。

3番アイアンを38・5インチとして、そのセットの長さは「38半合わせ」と呼ばれるようになり、これが“標準”となった。これは1980年代までは“一択”だっただろう。

ところがカーボンシャフトが登場すると、半インチ長い「39合わせ」も増えた。さらに、21世紀に入るとグリップエンドのキャップ分の長さを加味して「38・75合わせ」「39・25合わせ」がじわじわと主流になってきている。グリップ装着前の長さを切りのいい数字で管理したい、という気持ちと、少しでも長くして飛距離性能を上げたい、というメーカーの思惑だろうか。

ブライソン・デシャンボーで話題となったコブラのワンレングスアイアンも、7番の長さと言いながらスチールシャフトで37インチ。「39合わせ」と、昔より半インチ長くなっている。

ちなみに、最近はアイアンセットから3番は外れているので「〜合わせ」という表現もなくなってきている。雑誌の試打企画やカタログでも、5番か7番のレングス記載ばかりだ。

さて、ウッド類はどうか。カーボンシャフトが主流になり、金属へッドになった1990年代以降は、スプーンで43インチ前後、5番、7番でも1インチ刻みではなくなってきた。

この辺は、ドライバーの長さが大きく変わったことが影響している。スチールシャフトのパーシモンドライバーは43インチ前後が標準だったが、カーボンシャフトと大型メタルヘッドで43・5〜44インチ、カーボンへッドで“長尺”45インチが登場。

300㏄級のチタンヘッドが主流になると45インチが“ノーマル”となってきたために、スプーンで43インチ前後が当たり前になってきたわけだ。

現在は460㏄級のヘッドサイズとなり、ルール規制でレングスの上限が48インチとなっているが、さすがに市販モデルは45〜46インチに収まっている。

今年の2月初めに、R&AとUSGAが、プロツアーでの飛距離制限のための「ローカルルール」の提案を発表したが、その中にレングスの上限を46インチにする、というものがあった。私は、まったく無意味だと思う。

というのも、ツアー競技はドラコンではなく、純粋にターゲットゲーム。狙った範囲に運ぶうえでクラブのレングスは長いほど有利になる……はずがない。

長尺化に対応し、練習量でミート率を上げることができるとしたら、それこそ優れた技術でありアドバンテージが得られてしかるべきだと思う。それでも、わずかなブレがトラブルになる危険性は、キャリーが出るほど大きくなることは変わらないのだ。

つまり、スイング精度を問われる長尺化に制約をかける必要はないはず。デシャンボーのように筋力アップと技術向上の両輪で“遠く、正確に”の実現を目指す選手がいたとしても、長尺を使いこなすのは至難の業だろう。

逆に、体力差を道具と技術で補えるゴルフの魅力をなくさないためにも、余計な制限は増やすべきではないと思っている。


Text by Hikaru Togawa
Illustration by リサオ


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