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今どきのゴルフ会員権は買う必要がないのか?

重箱の隅、つつかせていただきます|第8回

2021/03/07 ゴルフサプリ編集部

スイング、ゴルフギア、ルールなどなど……。ゴルフに関わるすべての事柄の“重箱の隅”をゴルフライター・戸川景が、独自の目線でつつかせていただくコラムです。

GOLF TODAY本誌 No.585/93ページより

戸川景
とがわ・ひかる。1965年3月12日生まれ。ゴルフ用具メーカー、ゴルフ誌編集部を経て㈱オオタタキ設立。現在、ライターとしてゴルフのテーマ全般を手掛けている。

今どきのゴルフ会員権は買う必要がないのか?

かなり前に、ゴルフ会員権とマンションの購入基準は似ている、という主旨の記事を書いたことがある。現在でも通用する考え方だと思う。

高度経済成長期には保有するだけで資産価値が上がり、売却益を得られたこと。バブル崩壊以降、そういった投機目的の売買が激減したこと。マンションの場合には、まだ〝不動産バブル〟といった動きが時々見られるが、ゴルフ会員権市場はすっかり落ち着いた。私はこれを〝健全化した〟と捉えている。

元々、ゴルフ会員権はゴルフ場を造成する資金集めの意味合いがあった。その意味では、建築前の新築マンションの購入希望者募集とほぼ同じ。

現在の会員権売買は、現存するゴルフ場がほとんど。これは、中古マンションの売買に近い。

そこで購入基準を考えてみると、実によく似ているのだ。

まず立地エリアを選ぶ。通いやすさ、交通の便をチェックする。購入金額とランニングコスト(マンションなら管理費・修繕積立、ゴルフ場なら年会費)の検討。永く留まるか、買い替えのステップにするか。

すぐにこういった内容が考えられるが、実はもっと大事なチェック項目がある。〝他のオーナーの状況把握〟だ。

戸建てと違って、マンションでは管理組合など、オーナー同士で運営に対する〝義務と権利〟が生じる。その意見の対立や食い違いを増やさないためにも、生活レベルや考え方が近い者が集まるのがベターだ。

ゴルフ場のメンバーも同じではないだろうか。同好の士(ゴルフ好き)の集まりとはいえ、世代や年収が違い過ぎるコミュニティに入り込むのは難しい。

中古マンションや、開場から数年を経たゴルフ場では、すでにコミュニティが出来上がっているはず。マンションなら内見、ゴルフ場なら視察ラウンドなどを通して、確認することができる。

要は、そのコミュニティに馴染めそうかどうか、ということ。その意味で、ゴルフ会員権の場合は友人と一緒に購入するというのもオススメだ。

ただ、今どきのゴルフ会員権はそこまでして購入する価値があるだろうか。パブリックコースはリーズナブル、メンバーコースでもビジター大歓迎。年間ラウンド数からビジターフィとメンバーフィを天秤にかけても、元が取れないと感じる人も多いだろう。このあたりも、マンションは購入か賃貸かの議論に似ている。

私は、どちらも〝コスト感覚〟で考えるからいけないと思っている。金銭の損得ではなく、そのゴルフ場、そのマンションで〝義務と権利〟を背負いたいかどうかで考えるべきではないのか。

快適な、居心地の良い場を他者にお膳立てしてもらうのではなく、自ら意見する、動く。コミュニティに加わり、より良くする改善策を考える。ビジターや賃貸者ではできない取り組み方、愉しみ方があると思う。

そうはいっても、ゴルフ場なら営業不振で倒産、マンションなら大地震で倒壊といった、すべてがゼロになるリスクはついて回る。購入したくない、という人の気持ちもよくわかる。だから、私は購入を無理に勧めることはない。

ただ、私自身はマンションが潰れたら、無一文で生き残るより一緒に潰れてしまえばいいと思っているし、ゴルフ場はホームコースならではの濃密なプレーやクラブハウスで過ごした時間の思い出ができたことで良しとする、という考えでいる。

投機目的が消え、自身で活用するために購入する。マンションもゴルフ会員権も、本来はこうあるべきだと思っている。


Text by Hikaru Togawa
Illustration by リサオ


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