デシャンボーが世界に見せつけた新しい攻略法
一流キャディから人気レポーターへ! 世界の杉ちゃんが診る今月の一打
プロキャディー・ゴルフ解説者の“世界の杉ちゃん”こと、杉澤伸章氏が「全米オープン」でのレポートをお送りします。
GOLF TODAY本誌 No.581/79ページより
杉澤伸章(すぎさわ・のぶあき)
1975年7月5日生まれ。02年から丸山茂樹の専属キャディとして米国ツアーを転戦。13年には宮里優作のキャディを務め、「日本シリーズ」での初優勝にも貢献。現在はゴルフ中継番組のレポーターとしても活躍。
新時代の全米オープン王者
肉体改造のウラにあった 科学者の小技戦略が勝因
間違いなく、今年の全米オープンでデシャンボーは新しい攻略法を世界に見せつけました。「フェアウェイキープ最優先」ではなく「ラフに入ってもいいからグリーンの近くに運ぶ」というスタイルです。今年、肉体改造によって飛距離アップをしたデシャンボーらしい攻め方です。しかし、私が4日間、試合中継をしながら感じたのは確かにフェアウェイキープはしていませんが、「外しても大丈夫なサイドのラフ」にしか入れていないこと。例えば、右ならボギーでおさまるけど、左に外すとダブルボギーの危険性があるホールでは、絶対に右にしか外しません。また、ドッグレッグホールでもグリーンが狙えなくなるサイドには打ち出さないことを徹底していました。それが出場選手で唯一、4日間ともオーバーパーがないスコアで優勝できた要因だと思います。
昨年から20ヤードアップ!
肉体改造によって10kg体重を増やしたデシャンボー。今年はコロナ禍の影響で飛距離計測のデータが少ないが、約20ヤード伸びたとも言われている。
ハンチング帽は、ペイン・スチュワートから
ハンチング帽を被るデシャンボーは、不運な飛行機事故で命をおとしたペイン・スチュワートと同じ南メソジスト大学出身。ペインに憧れてハンチング帽を被るようになったそうだ。
最終日、マシュー・ウルフとの一騎打ちとなりましたが、勝負を分けたのは9番ホールのイーグル合戦。このホールで約3メートルのイーグルチャンスにつけたのはマシュー・ウルフ。このイーグルを入れて、デシャンボーがバーディならスコアは並びます。しかし、約12メートルを残していたデシャンボーが先にイーグルをとりました。ウルフもイーグルを入れ返しましたが、追いつくはずだったのが1打ビハインドでバックナインへ。ウルフは徐々にスコアを落として、最後は6打差になりました。
デシャンボーは筋肉もすごいですが、同じく飛ばし屋のマシュー・ウルフとの最終日は、ウルフの方が飛距離は上回っていました。最終日のデシャンボーはかなりスピン量を増やしながらドライバーを打っていたと思います。そういう戦略性が本当の科学者の姿かも知れません。
ウィングドフットで最少スコア更新
ウイングドフットGCでの全米オープンは6度目ですが、優勝スコアがアンダーパーだったのは1984年だけ(ファジー・ゼラー/4アンダー)。デシャンボーは6アンダーでそれを更新。
5.5度のドライバーにワンレングスのアイアン
科学者とも異端児とも言われるデシャンボーはドライバーのロフトが5.5度で、アイアンからウェッジをすべて同じ長さ(ワンレングス)で揃えている。