2020マスターズ「残り230ヤードから刻んだ」 ダスティン・ジョンソンの新戦術
世界の杉ちゃんが診る今月の一打
プロキャディー・ゴルフ解説者の“世界の杉ちゃん”こと、杉澤伸章氏が初のマスターズ優勝を果たしたダスティン・ジョンソンのレポートをお送りします。
GOLF TODAY本誌 No.583/79ページより
杉澤伸章(すぎさわ・のぶあき)
1975年7月5日生まれ。02年から丸山茂樹の専属キャディとして米国ツアーを転戦。13年には宮里優作のキャディを務め、「日本シリーズ」での初優勝にも貢献。現在はゴルフ中継番組のレポーターとしても活躍。
自滅していた頃とは攻め方が一変!
13番で残り230ヤードから刻んだDJの新戦術
ダスティン・ジョンソンのプレースタイルが変わったと確信したのは最終日の13番でした。これまでは、メジャーあ最終日に自滅することが多く、あと一歩で勝ちきれない選手でした。PGAツアーで23勝しながらメジャーでは1勝のみ。過去に4度もメジャーで最終日をトップで迎えながら、その4試合はすべて優勝を逃しました。記憶に新しいところでは今年の「全米プロ」でもトップで最終日を迎えながら、コリン・モリカワに逆転されています。
実は今年の「マスターズ」も最終日を4打差トップで迎えながら、4番と5番の連続ボギーで1打差まで縮められてしまいます。しかし、その後は堂々とした勝者のゴルフでした。
象徴的だったのが13番パー5です。ここは、パワーヒッターであればツーオンを狙えるホール。しかし、最終日のダスティンは1打目を3Wで263ヤードに置くと、残り229ヤードの状況からグリーンを狙わずにPWで134ヤードを打って小川の手前に刻みました。そこから3打目の残り98ヤードをピンまで4メートルにつけてバーディを奪います。ここでダスティンは小さくガッツポーズをします。このバーディが安心感と余裕を与えることになり、続く14番、15番でも連続バーディ。最後はマスターズ新記録となる20アンダーで優勝することになりました。
唯一、パーオン率が80%を超えていた
マスターズの記録を調べると、4日間のパーオン率が80%を超えていたのはダスティンのみ。その安定感が史上最少スコアにつながった。
背格好が似ている弟がキャディ!
長年、ダスティンのキャディを務めるのは実弟のオースティン・ジョンソン。信頼できる弟がダスティンの闘う気持ちを支え、兄弟で勝ち取ったマスターズ優勝だった。
ダスティンはドライバーの飛距離もPGAツアーでトップクラスですが、方向安定性もピカイチ。それでも、13番でドライバーを使わず、ツーオンすら狙わずにバーディを奪ったのは円熟味を感じるマネージメントでした。メジャー2勝目までは長かったですが、これからは世界ランク№1選手としてメジャー優勝を重ねていきそうな新生DJの強さを感じました。
タイガーの最少スコアを2打も縮める新記録
「マスターズ」の大会レコードである18アンダー(タイガー・ウッズ、ジョーダン・スピース)を2打も縮めた20アンダーで優勝。
実家はオーガスタから車で約1時間
普段はクールなダスティンが表彰式では涙を見せた。ダスティンの実家はオーガスタから車で1時間で「子供の頃からの夢が叶った」と涙の理由を語った。