プレーヤー・オブ・ザ・イヤーのキム・セヨンの平均ストロークが驚異的!
「いまどきツアーをデータ斬り!」国内外のゴルフツアーをあらゆるデータで一刀両断 Vol.61
2020年の米女子ツアーは全米女子プロなど2勝を挙げたキム・セヨンが自身初のプレーヤー・オブ・ザ・イヤーに輝いた。キムの平均ストロークは68.686。これは、とんでもない大記録なのだ。
プレーヤー・オブ・ザ・イヤーのキム・セヨンの平均ストロークが驚異的!
新型コロナウイルス感染拡大の影響でスケジュールが大きく乱れた米女子ツアーだったが何とか18試合を開催し、12月20日に最終日を迎えたCMEグループツアーチャンピオンシップで2020年のシーズンを終えた。キム・セヨンは最終戦こそ単独首位からコ・ジンヨンに逆転されて2位に終わったが、ポイントで争うプレーヤー・オブ・ザ・イヤーでは朴仁妃を逆転。最高の栄誉を手中にした。
元々、高い実力を誇るキムだが、2020年は一層安定したゴルフを披露した。9試合、35ラウンドをプレーして60台が約3分の2にあたる23ラウンド。平均ストロークは68.686で、2位ブルック・ヘンダーソンに1.017もの大差をつけて1位となった。
実はこの68.686という数字は2004年にアニカ・ソレンスタムがマークした68.697を塗り替える米女子ツアー歴代最高記録なのである。
従来の歴代記録トップ3はソレンスタムが独占していた。そのソレンスタムのあまりに高かった壁をキムが初めて乗り越えたわけだ。
2020年は試合数が少ない特殊なシーズンだったということが新記録誕生の背景にあったことは否めないだろう。だが、2位に1以上の大差をつけたのが2005年のソレンスタム以来15年ぶりだったという事実もある。キムのプレーが他を圧倒していたこともまた間違いのないことなのだ。
余談だが、ソレンスタムは2002年から4年連続で2位に1以上の大差をつけていた。それくらい強かったのだ。
米女子ツアーには平均ストローク1位に授与されるベアトロフィーというステータスの高い賞がある。ただし、受賞対象は年間70ラウンド以上プレーした選手という縛りがある。2020年は特例で48ラウンドに緩和された。それでも上位はキムをはじめ軒並みラウンド数不足でベアトロフィーを手にしたのは4位のダニエル・カンだった。
キム以前に平均ストローク1位の選手がラウンド数不足でベアトロフィー受賞を逃した例は2004年のソレンスタムまでさかのぼる。ここでも、「ソレンスタム以来」という注釈がつくのも興味深い。
米女子ツアーは約1カ月の短いオフを経て、早くも今週、2021年シーズンの開幕戦を迎える。今季はどんな記録が誕生するのか楽しみだ。
米女子ツアー平均ストローク歴代トップ5
順位 | 選手名 | 平均ストローク(年度) |
---|---|---|
1位 | キム・セヨン | 68.686(2020年) |
2位 | アニカ・ソレンスタム | 68.6970(2004年) |
3位 | アニカ・ソレンスタム | 68.6974(2002年) |
4位 | アニカ・ソレンスタム | 69.017(2003年) |
5位 | コ・ジンヨン | 69.062(2019年) |
※2位と3位のみ僅差のため小数点以下4桁まで表示
文・宮井善一
1965年生まれ。和歌山県出身。スポーツニッポン新聞社でゴルフ記者を8年間務め、2004年にフリーのゴルフライターとして独立。ゴルフ誌などに執筆のほか日本プロゴルフ殿堂オフィシャルライターとして活動している。元世界ゴルフ殿堂選考委員。
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