待たされたあとの「プレーオフ」、待ち時間が及ぼす影響とは!?
「いまどきツアーをデータ斬り!」国内外のゴルフツアーをあらゆるデータで一刀両断 Vol.62
米ツアーの2021年初戦、セントリー・トーナメント・オブ・チャンピオンズはプレーオフの末、ハリス・イングリッシュがホアキン・ニーマンを破って8年ぶりの優勝を飾った。本選ではニーマンはイングリッシュの4組前をプレーしていた。この長い間隔がプレーオフの勝敗に影響を及ぼすというデータがある。
待たされたあとの“プレーオフ”、待ち時間が及ぼす影響とは!?
セントリー・トーナメント・オブ・チャピオンズ最終日はイングリッシュ、ライアン・パーマーの最終組が伸び悩み、後続が追い上げる展開となった。中でも5打差7位にいたニーマンがバーディラッシュをみせて25アンダーの単独首位でホールアウト。通算2勝目にグッと近づいた。
だが、インに入って調子を取り戻したイングリッシュが18番のバーディでニーマンをとらえる。そしてプレーオフは1ホール目でイングリッシュがバーディ。待っていたニーマンを後から上がったイングリッシュが下したのだ。
以前、このコラムで日本ツアーでは異なる組でプレーした2人によるプレーオフの場合は後ろの組でプレーしていた選手がほぼ3分の2の確率で勝つというデータを紹介した。米ツアーではどうかというと、ここ10シーズンのデータでは今回を含めて待っていた選手が26勝22敗と勝ち越している。日本とは逆の傾向というわけだ。今回は米ツアーの傾向とは異なる結果だった、ということになる。
ただし、条件を絞ると傾向がガラリと変わる。
今回、ニーマンは最終組の4組前でプレーしていた。「2人の間が4組以上空いていた」という条件にあてはまるのは今回を含めて7例あり、待っていた選手が2勝5敗とかなり分が悪いのである。日本でも過去10年で同様のケースが7例あり、同じく待っていた選手が2勝5敗だ。この条件下では日米で傾向が一致している。
スタート時間から逆算するとニーマンとイングリッシュの間は40分ほどあったことになる。これだけの時間、ニーマンが気持ちを保ち続けるのは簡単ではなかっただろう。実際、プレーオフではバーディ必須の18番パー5で2打目をグリーン左に外し、アプローチがグリーンに届かず、カラーからの4打目もショートと精彩を欠いたプレーだった。“待ち過ぎ”が悪影響を及ぼした可能性が十分にありそうだ。
最後に、ここ10シーズンで“待ち過ぎ”を克服して勝った2選手のうちの1人が日本選手であることを記しておきたい。2018年RBCヘリテージの小平智だ。この時、小平は最終組の5組前で回り、プレーオフの相手は最終組のキム・シウだった。
米ツアー2人でのプレーオフで両者の間が4組以上離れていたケース(2012年以降)
大会 | 待っていた選手 | 勝敗 | 後から上がった選手 | 勝敗 |
---|---|---|---|---|
12年マヤコバクラシック | J・ハー | ○ | R・アレンビー | ● |
14年メモリアル | K・ナ | ● | 松山英樹 | ○ |
15年ホンダクラシック | D・ベルガー | ● | P・ハリントン | ○ |
15年バラクーダ選手権 | K・レイファーズ | ● | J・J・ヘンリー | ○ |
18年ソニーオープン | J・ハーン | ● | P・キザイア | ○ |
18年RBCヘリテージ | 小平智 | ○ | キム・シウ | ● |
21年トーナメント・オブ・チャンピオンズ | J・ニーマン | ● | H・イングリッシュ | ○ |
文・宮井善一
1965年生まれ。和歌山県出身。スポーツニッポン新聞社でゴルフ記者を8年間務め、2004年にフリーのゴルフライターとして独立。ゴルフ誌などに執筆のほか日本プロゴルフ殿堂オフィシャルライターとして活動している。元世界ゴルフ殿堂選考委員。
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