渋野日向子が演じた「最終ホール2打差」からのPO勝利は、まさにデータどおり!
「いまどきツアーをデータ斬り!」国内外のゴルフツアーをあらゆるデータで一刀両断 Vol.104
樋口久子三菱電機レディスは最終ホールで渋野日向子が2打差を追いつき、プレーオフでペソンウを下す劇的な展開となった。実はこのケース、追いつかれた側は全敗というデータがあった。渋野の勝利はプレーオフになった時点で決まっていたのかも!?
渋野が演じた「最終ホール2打差」からのPO勝利は、まさにデータどおり!
渋野とペが首位に並んで迎えた最終日は一進一退の攻防から17番でバーディを奪ったペが2位の渋野に2打差をつけて18番パー5に入った。起死回生を狙った渋野のイーグルパットがわずかにショートして勝負は決したかに思われたが、ペが1メートル強のパーパットを外してプレーオフへと突入したわけだ。
今回のように最終組の選手が2打のリードで最終ホールを迎えながら追いつかれたというケースはホールバイホールのデータが残る1990年以降で5例目だった。過去の4例は追いつかれた選手がプレーオフ全敗。そのデータどおり、今回も渋野が1ホール目でペを打ち破った。
過去の例で記憶に新しいのが2017年のKKT杯バンテリンレディスだ。地元・熊本県での10年ぶりの優勝を目指して1打差首位で最終日を迎えた上田桃子は17番を終えて2位グループに2打差をつけていた。優勝目前。だが、18番パー5で同じ最終組を回っていた2位の西山ゆかりが5メートルのバーディパットを決めたあと、短いパーパットを外してまさかの3パットボギーで追いつかれた。18番で行われたプレーオフでは上田が2打目をグリーン手前の池に入れて再びボギー。パーの西山に凱歌があがっている。
2008年のヨコハマタイヤPRGRレディスでは横峯さくらが最終ホールでダブルボギーを叩いて日本ツアー初参戦の申ジエに追いつかれ、4ホールに及んだプレーオフは申のバーディで決着がついた。申はこの優勝でツアーメンバーに登録した。
今回は追いつかれた選手が3パットのボギーで追いついた選手が同じ最終組でバーディという点、さらにプレーオフ1ホール目で決まったという点で前述のKKT杯バンテリンレディスと同じ状況。異なるのは渋野がイーグルで決着をつけたということだ。
女子ツアーのプレーオフでイーグルが飛び出したのは2005年クリスタルガイザーレディスの藤井かすみ、2012年meijiカップのフォンシャンシャンに次ぐ3人目。このレアケースが「渋野劇場」をよりドラマチックに盛り上げた。
2打リードで最終ホールを迎えた最終組の選手が追いつかれてプレーオフになった例
大会 | 追いつかれた選手 | 勝敗 | 追いついた選手 |
---|---|---|---|
1997年健勝苑レディス・道後 | 平田充代 | ●−○ | 原田香里 |
1999年サントリーレディス | 入江由香 | ●−○ | 肥後かおり |
2008年ヨコハマタイヤPRGRレディス | 横峯さくら | ●−○ | 申ジエ |
2017年KKT杯バンテリンレディス | 上田桃子 | ●−○ | 西山ゆかり |
2021年樋口久子三菱電機レディス | ペソンウ | ●−○ | 渋野日向子 |
※1990年以降
文・宮井善一
1965年生まれ。和歌山県出身。スポーツニッポン新聞社でゴルフ記者を8年間務め、2004年にフリーのゴルフライターとして独立。ゴルフ誌などに執筆のほか日本プロゴルフ殿堂オフィシャルライターとして活動している。元世界ゴルフ殿堂選考委員。
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