Attack Life! 27年を経て再び新ツアーに挑戦するグレッグ・ノーマン
佐渡充高のテレビでは語れなかったPGAツアー
ゴルフ番組やゴルフ雑誌ではあまり語られることのないトピックを、ゴルフジャーナリストやトーナメント中継の解説者として活躍する佐渡充高が取り上げ、独自の見解とともにお届けします。
GOLF TODAY本誌 No.595/115ページより
新ツアーに向けて再び動き出したホワイトシャーク
再び、グレッグ・ノーマン(豪州・66歳)が動きだした。サウジ系投資ファンド出資の会社でCEOとなり、来年から10年間アジア、中東、欧州で10試合開催の新ツアーのコミッショナーに就任する模様で「これは始まりにすぎない」と予告した。
27年前、94年11月ノーマンはスポークスマンとして「ワールドツアー構想」を発表。世界トップ30人と推薦10人による高額賞金の試合を米国、欧州、日本などで8試合開催するというもの。出資は同じ豪州出身で昵懇のメディア王ルパート・マードックの関連会社だった。が「PGAツアーの利益を損なう」と3年に及ぶ訴訟となり、97年にノーマン側は敗訴。その2年後にPGAツアーは世界選手権をスタートした。
ノーマンは世界で68勝、うち米国20勝、欧州14勝、世界ランク1位に通算331週歴代2位、メジャー2勝(全英)、01年世界殿堂入りするなど圧倒的な強さだった。81年、26歳で初出場したマスターズで単独4位となり話題沸騰!記者会見で「故郷グレートバリアリーフで鮫の近くでもダイブした」という言葉から地元紙が「グレイト・ホワイト・シャーク」と表現し、それをとても気に入りトレードマークとしても使い続けている。
現役時代から常に先駆的、革新的だった。現在多くのトッププロ在住のフロリダ州ジュピターに最初に住みはじめ、後年タイガー・ウッズがすぐ近くに転居。ボクシングも取り入れたハードな肉体改造、メンタル面は禅から“無”を学んだ。ライダー杯に出場できない欧米外選手のために、米国歴代大統領と親しいノーマンは精力的に動きプレジデンツ杯開催の実現をサポートし、主将にも就いた。
シニアツアーには参加せずビジネスで大成功。不動産業も手がける彼のゴルフ場は設計はもちろん管理や運営も素晴らしい。開発した芝はNFLスーパーボウルでも使用され、ワインや和牛も価格以上の満足感。12ホールのコースや音楽や映像を楽しみながらプレーできるストリーミング端末搭載カートを発表するなど、常に時代を先取りするアイデアだった。
ブライソン・デシャンボーのワンレングスクラブもいちはやく体験し「少年時代に知っていたら必ず使っている。スイングがシンプルになり腰痛も軽減されるだろう」と絶賛。その時、彼の脳裏に96年マスターズでのニック・ファルドとの激闘が浮かんだのでは? 後に語った敗因は「腰の激痛」だった。
昨年末はコロナ陽性で緊急入院。全身痛、味覚や記憶障害とかつてない症状を経験し人生観が変わったという。
90年代のある日ニューヨーク地下鉄Fラインに乗った時、全車両の全広告部分がノーマンの座右の銘「アタック・ライフ」のポスターという圧巻の景色で、決意表明のようだった。新ツアーへの思いはリベンジではなく、夢と理想のための覚悟の挑戦ではないかと思う。
前妻の元テニス世界女王クリス・エバートとは1年半の短い結婚生活だった。
●文/佐渡充高
さど・みつたか
上智大学法学部卒業。1985年に渡米し、USPGAツアーを中心に世界のゴルフを取材。NHKゴルフ解説者。
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