どう「記録」とは向き合うべきなのか?

今年の野球界は記録ラッシュだったが、気になったのは「シーズン最多本塁打」。MLBではアーロン・ジャッジが62本でア・リーグ新記録、NPBでは村上宗隆が56本で〝日本人としての〟新記録を達成…ということだが、ジャッジは文句なしとして、村上の〝日本人としての〟という括りが引っかかった。

NPBの記録は、2013年にウラディミール・バレンティンがマークした60本が最多のはず。偉大な王貞治の55本越えとはいえ、ファンだけでなくマスコミも〝歴代2位〟ではなく〝新記録〟ともてはやしているのに強い違和感があったのだ。

同じフィールドでも〝外人〟は別物扱いという空気。
日本人はただ〝外国人〟というニュアンスよりも〝外の人〟という感覚が強いように感じる。

ゴルフ界でも同じ。国内ツアーで外国人選手が優勝しても、健闘した日本人選手の扱いのほうが大きくなる記事が多い。日本の試合だから、日本人選手をクローズアップするのは当たり前…なのだろうか。

こういった傾向は日本人のニーズに応えているだけ、というマスコミ側の考え方もあると思う。それに否を唱えるつもりはないが、ひとつ危惧しているのが〝記録の残り方〟だ。

ゴルフ界で重要な記録のひとつは「勝利数」だろう。これがなぜか曖昧になりやすい。その理由の中に〝外国人=ツアーライセンスの有無〟というのも関わっているのだ。

「記録」カウントの気になる点

1970年代から20年近く活躍した、台湾の涂阿玉。JLPGAのツアー優勝記録は58勝だが、日本プロゴルフ殿堂での記録は樋口久子と並ぶ69勝となっている。

実は、1981年にJLPGAの入会する前の11勝は、通算勝利数の「対象外」と見なされているからなのだ。入会前は〝外人〟だから「対象外」。

ツアー通算勝利数をそんなカウントの仕方をして、おかしいと思わないのだろうか。

ゴルフの場合、後援競技、ステップアップといったツアー外の競技も多く、また海外ツアーとの共催もあるため、ツアー勝利数は厳密にカウントしたいところだが、この「ツアーライセンスなしの場合は対象外」という根拠はどうにも納得がいかない。

実はこれ、外国人枠だけの話ではない。畑岡奈紗のJLPGAツアー優勝回数は4回と記録されているが、2016年の日本女子オープン選手権と、2018年のTOTOジャパンクラシックの優勝はカウントされていない。

「アマチュアでの優勝」は通算しない、「USLPGA資格での出場」は通算しない、という理由だそうだが、これも納得できるだろうか。生涯獲得賞金にはツアーごとの線引きがあるのはよいとしても、通算勝利数に加えない理由としてはおかしいと思う。

男子ツアーでも気になるのは、外国人関連も含め「ツアー制度施行前」の記録がだんだん見つかりにくくなっていることだ。ツアー制度は1973年からスタートしているが、それ以前の河野高明が賞金王になった時の獲得賞金額など、すぐには見つからない。本来であれば、JGTOが「参考記録」としてでも残すべきだと思うのだが。

ちなみに、日本男子ツアーの最年長優勝記録は2002年の全日空オープンで尾崎将司が記録した55歳241日だが、ツアー制度施行前の1971年に公式戦である関西プロで戸田藤一郎は56歳9カ月6日で優勝している。この大会で敗れた杉原輝雄は、この記録を越えようとシニアでもレギュラーの試合でも頑張っていた。

外国人枠だから、ツアー制度前だからといって「忘れていい記録」などあってはならないと思う。




戸川景(とがわ・ひかる)

1965年3月12日生まれ。ゴルフ用具メーカー、ゴルフ誌編集部を経て㈱オオタタキ設立。現在、ライターとしてゴルフのテーマ全般を手掛けている。


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