佐渡充高が語る、偉業を成し遂げてきたタイガー・ウッズのマスターズへの想い。あの歓喜と渾身のショットをもう一度
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ゴルフ番組やゴルフ雑誌ではあまり語られることのないトピックを、ゴルフジャーナリストやトーナメント中継の解説者として活躍する佐渡充高が取り上げ、独自の見解とともにお届けします。
GOLF TODAY本誌 No.610/131ページより
なぜか届いた幻のTIGER GOODSマスターズ初優勝記念メダル
頭が動くバブルヘッド人形や、子供向けファンクラブも空前の人気で特典の「I am Tiger Woods」Tシャツ、さらにシリアルのパッケージにもなったタイガー。
世界が驚愕したタイガー・ウッズの偉業から26年もの歳月が経とうとしている。1997年4月13日マスターズにプロとして初出場、初優勝。圧倒的プレーにスポーツファンは新時代到来に歓喜した。
人種のバリアを突破しただけでなく全米オープン勝者、2度の賞金王の2位トム・カイトに12打差の圧勝、優勝スコア18アンダーは当時の大会新記録。21歳最年少優勝でセベ・バレステロス(スペイン)の記録を2歳更新。まさに歴史的快挙だった。
翌朝に届いたNYタイムズ紙は一面に大きなウッズの写真や記事、そしてフランクリンミント社の「優勝記念メダル」の大きな販売広告があった。余韻に浸る僕は思い出に、と早速注文。
が、数日後にウッズ側が「肖像権の侵害」で訴訟を起こし勝訴、販売差し止めになった。
幻のメダルになってしまったと完全に諦め忘れていた頃、届いたパッケージを開けてみると、まさかの記念メダル!何かの間違い?と思いつつ手にした。
直径約4センチ強の銀製でコインの表はウッズのフィニッシュと表情が描かれ、裏は樹立した2つの新記録、円周に「第61回マスターズ優勝者」の刻印入り。販売停止になったのになぜ届いたのか?真相は今も不明だが、希少品だと大切に保管してきた。
例え非公認でも僕にとっては宝物、コインを見る度にあの日のウッズの渾身ショット、パット、表情が蘇ってくる。その後、時代の寵児ウッズのオフィシャル・グッズが次々に発売され、米国では人気の定番バブルヘッド人形や朝食(シリアル)のパッケージに。
子供向けファンクラブも空前の人気で特典の「I am Tiger Woods」Tシャツも大流行など社会現象を巻き起こした。
満身創痍のタイガー、マスターズゴルフ2023 での健闘を祈る!
1997年のマスターズ優勝記念コイン。肖像権問題で販売差し止めになったはずが、なぜか後日送られてきた希少品。
ウッズはアマ時代2回を含め昨年までマスターズに計24回出場し5勝、2位2回、トップ5に5回と圧倒的な強さ。が、2016年以降の7年は負傷等で3回も欠場。
昨年は右脚複雑骨折からの復帰初戦で足を引きずりながら予選を突破、47位と健闘。
メジャー15勝の勝利数を上回る手術歴、負傷歴で満身創痍の状態でもマスターズは何としても出場する!という熱い思いが伝わってきた。
昨季のツアー出場はわずか3試合。12月自身主催試合は直前に足を傷め欠場。翌週はカート使用可で長男チャーリーとペアでPNCチャレンジに出場したが、やはり足を引きずる姿は痛々しかった。
努力と工夫、情熱で数々の困難を乗り越え、今も強豪後輩たち驚愕のショットを放つウッズ。
昨年末47歳になりシニア入りまで2年8か月。今春マスターズでどのようなプレーをするのか?コインを手に26年の激闘に思いを馳せ、あの日より大きな拍手を贈りたいと思う。
タイガー・ウッズ/プロゴルファー
1975年12月30日カリフォルニア州サイプレス生まれ 47歳。父アールがベトナム戦争時代の親友で勇敢だったタイガーから名前をもらいエルドリック・タイガー・ウッズに。
通算82勝はサム・スニードと最多優勝回数タイ記録。97年マスターズで史上最年少優勝を成し遂げメジャー通算15勝はニクラスの18勝に次ぎ歴代2位、史上二人目のトリプルグランドスラムも達成。21年自動車事故による脚の複雑骨折で長期ツアー離脱中。
●文/佐渡充高
さど・みつたか
上智大学法学部卒業。1985年に渡米し、USPGAツアーを中心に世界のゴルフを取材。NHKゴルフ解説者。
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