1. TOP メニュー
  2. HOTニュース
  3. 海外ニュース
  4. “アイスマン”と呼ばれたベン・ホーガン 佐渡充高はアーノルド・パーマーに対する彼の表情を見て…

“アイスマン”と呼ばれたベン・ホーガン 佐渡充高はアーノルド・パーマーに対する彼の表情を見て…

佐渡充高のプレミアム・ファイル

2023/06/27 ゴルフサプリ編集部

佐渡充高のプレミアム・ファイル

ゴルフ番組やゴルフ雑誌ではあまり語られることのないトピックを、ゴルフジャーナリストやトーナメント中継の解説者として活躍する佐渡充高が取り上げ、独自の見解とともにお届けします。

GOLF TODAY本誌 No.613/115ページより

イメージを勝手に作られても一切弁明をしなかった〝アイスマン〞の微笑

佐渡充高のプレミアム・ファイル

1955年8月8日の「LIFE」誌。「ホーガンの秘密」と題し13ページの特集号。ツアー引退後に、不朽の謎と言われたエッセンスを公開し大反響に。少年時代からの友人バイロン・ネルソンにホーガンのことを聞いたとき「左グリップをややウィークにしたことが彼をスーパープレーヤーにした」と語っていた。以来、僕はこのグリップの写真をながめ続けている。

88年ニューヨークで行われた米国ゴルフ生誕100年祭は、100人近くのレジェンドが集う歴史的行事だった。

90歳のジーン・サラゼンは残念ながら欠席も、式典前のカクテルルームは伝説の偉人が集い、僕は夢の中にいた。

しばらくすると扉の向こうから眼鏡にタキシード姿のベン・ホーガン(当時75歳)が入室!闘病中で欠席と思いこんでいて想定外の出来事に心臓が止まりそうになった。

“リトルマン”と称されていたが想像よりずっと華奢で小柄。しかし、一瞬にして場の空気を変える強烈なオーラを放っていた。

数分後にアーノルド・パーマーが現れ、僕は勝手に緊張。というのも2人は決して良好な関係ではないと聞いていたからだ。

が、冷徹、無表情で“アイスマン”とも呼ばれたホーガンはパーマーを前にしても「微笑」を絶やさなかった。この出来事で僕のホーガン像は変わった。

信頼を得た人物からの証言

ベン・ホーガン,グリップ握り方

バックスイングのトップで手の甲を腕と真っすぐにするか、甲側に折るかでスイングは大きな変化があると言明した。

さらに“リアル”ホーガンを知ったのは90年代に対面した2人の友人の話から。

当時全米ゴルフ協会発行「ゴルフジャーナル」編集長デビッド・アールは数年間の親交を経てテキサスのホーガン邸に招かれた。よほど信頼を得たのか、引退後に私邸で面会した報道関係者はおそらく彼だけだろう。

後日アールとプレーした時に「冷徹イメージが定着したのは間違った報道で弁明も一切しなかったから。“そんな時間があれば練習だろ?”」と笑顔で明かしたと聞いた。

アールが訪問したのは終の棲家。レンガ壁に囲まれ通りから見えず、主邸はバレリー夫人と快適に暮らすための部屋のみ。ゲストルームもなく、とても小さな建物だった。

隠遁生活の理由は人嫌いではなく、体調。自動車事故の大ケガから1年足らずで復活しグランドスラムなど数々の偉業を成し遂げたものの全身の痛みは続き、後遺症の内臓疾患も追い打ちをかけた。

全身に緩和剤を塗布するなど様々なケアをするのが日課、最晩年は結腸の手術など激闘の生涯だった。

会場の雰囲気を一つにした感謝の手紙

ベン・ホーガン,グリップ握り方

グリップで親指をシャフトの左にずらして握るフック・グリップから、シャフトの上に置くスクエアに握るようにしたとのこと。

96年5月、ホーガンが終生所属したコロニアルCCへ取材に行った際、友人カート・サンプソンが渾身の著書「ホーガン」を持って来てくれた。

「ホーガンでさえゴルフ上達に秘密も近道もなかった。日々の練習、感情とコースマネジメントの3つ。人生と似ているね」とつぶやいた。

今春マスターズのチャンピオンズディナーは、LIVゴルフ移籍選手の出席もあり雰囲気が違った。司会のベン・クレンショーが冒頭でホーガンが54年に創設者ボビー・ジョーンズらに宛てた感謝の手紙を読み上げた。

それで出席者の心が一つになったと聞き、僕はあの日のホーガンの微笑を思い起こした。

ベストセラー「ホーガン」

「ホーガン」

「ホーガン」の著者カート・サンプソン(71歳)は、ケント州立大学卒業後にツアープロとして数年を過ごし著述家に転身。

「ホーガン」はゴルフ関連本で最高の販売部数、NYタイムスのベストセラーに。96年5月にサンプソンから手渡された著書「ホーガン」と僕へのメッセージ。

ベン・ホーガン/プロゴルファー

ベン・ホーガン

1912年テキサス州生まれ。97年7月84歳で他界。
9歳の時に父親が自殺し家計を助けるためキャディに。
猛練習で技術を磨き18歳でプロ転向。練習の鬼と言われ引退するまで究極を求め続けた。

PGAツアー通算64勝。メジャー通算9勝。
1953年全英オープンに勝利しグランドスラム達成後、時の人としてニューヨークのブロードウェイでパレードが行われた。
最優秀選手4回、賞金王5回。74年ゴルフ世界殿堂入り。

佐渡充高

●文/佐渡充高
さど・みつたか
上智大学法学部卒業。1985年に渡米し、USPGAツアーを中心に世界のゴルフを取材。2022年まで32年間NHKゴルフ解説者。今年からBS放送局『BSJapanext』にて「大正製薬 Presents PGA TOUR TV Program PGAツアー」の解説者に。


【佐渡充高のプレミアム・ファイル】
←佐渡充高氏が♥︎(ハートマーク)を見るたび思い出す、引退後も愛あふれるゴルフ界のレジェンドは誰?
ウッズと、彼のチーム&ルームメイトだったケーシー・マーティン 2人がカートに乗ってプレーする姿を見たい→

前回へ 次回へ

シリーズ一覧へ

2024年最新フェアウェイウッドおすすめ人気ランキング20選|選び方のポイントも解説!

2024年最新のフェアウェイウッドおすすめ人気ランキングを発表!ゴルフ初心者・中級者はもちろん、上級者からも人気のフェア...

あわせて読みたい

フェアウェイウッドが苦手な人に朗報キター!自分にぴったりの7Wを手に入れて、世界を変える

飛距離を稼ぎたい状況で、頼れる武器となるのがフェアウェイウッド。しかし、その分ミスすると精神的にもダメージが大きく、...

あわせて読みたい

女子プロゴルフツアーで一番かも? アース・モンダミンカップは、ギャラリーにすっごくやさしい大会だ

今週のJLPGAツアーは第17戦のアース・モンダミンカップ(6月22~25日)。国内最高となる賞金総額3億円(優勝賞金5400万円)の...

あわせて読みたい