「キャディバッグの上げ下ろしはセルフでお願いします」というゴルフ場が増えている本当の理由
ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第85回
ゴルフの虜になってもうすぐ半世紀。年間試打ラウンド数は50回。四六時中ゴルフのことばかりを考えてしまうロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が、コースや色々な現場で見聞きし、感じたことを書いたのが【毒ゴルフ・薬ゴルフ】です。大量に飲めば死んでしまう毒も、少量なら薬になることは、ゴルフにも通じるのです。
写真提供/篠原嗣典
最近増えているキャディバッグの“上げ下ろしはセルフ”って、どうなの?
“お車からのキャディバッグの上げ下ろしは、お客様のセルフとさせていただいております。ご自分で下ろしたキャディバッグをスタッフにお渡しください”という看板が、車寄せにいくつも立っているゴルフコースが急増しているそうです。
ちゃんと立て札を読まずに運転席から操作してトランクを開けて、キャディバッグを下ろしてもらうのを待っている人が続出し車寄せは大渋滞、というシーンも同時多発的に起きているとか。現場は軽く混乱をしている様子です。
「世も末だねぇ。そんなことまで経費削減でサービスしなくなるなってさ」と嘆いているオールドゴルファーもいるようですが、大手の系列ゴルフコースでは車からの上げ下ろしだけではなく、キャディバッグをカートの近くまで運ぶところまでがセルフというケースもあるようです。
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日の出早朝ゴルフなどでは、スタッフがいないのでセルフでカートにキャディバッグを積むのは当然ですが、通常営業では聞いたことがありませんでした。
このようなスタッフがいないケースは経費削減になるのかもしれませんが、車からキャディバッグを上げ下ろしするだけで、待機しているスタッフに渡すのであれば、スタッフの数や配置時間も変わらないので、経費削減にはなりません。
「今まで通りでいいじゃないか!」と怒る人も少なくないそうです。確かにキャディバッグの上げ下ろしだけがセルフという決まり、というかお願いは、意味がわからないので不愉快に思う人もいるのでしょう。
単なる経費削減ではない裏事情を知ったうえで、僕らは考える!
どうして、“キャディバッグの車からの上げ下ろしはセルフで”が急激に広まっているのでしょうか?調べてみると、想像もしていなかった複数の変な話を耳にしました。共通しているのは、その事故は有名な高級セダンで起きるということです。
スタッフが挨拶をしながら開かれたトランクからキャディバッグを下ろすと、「今変な音がしたけど、大丈夫か?」と運転していた人が大声を出しながら降りてきて、トランクを覗き込んでさらに大騒ぎをするのです。
「この傷!どうしてくれるんだよ!責任者を呼べ!」トランクの中には微かにわかる擦り傷があるのですが、防犯カメラでもトランクの中までは確認できません。
ゴルフコースはこういうときのために保険に加入しているので、保険で処理をします。キャディバッグが車にぶつかって傷を付けてしまう事故は、昔から起きています。もちろん、スタッフは細心の注意を払って未然に防ごうとしますが、なかなかゼロにはなりません。
変な話の真相は?
しかし、その多くは保険を使う事故にまでならないことが多いのです。目立たない傷で騒ぐのはセコくてカッコ悪いという見栄や、スタッフが可哀想だと我慢するわけです。
ところが最近になって、有名高級セダンの持ち主が「事故だ」と主張するケースが続発しているというのです。某中古車チェーンがニュースで問題になっていますが、修理工場と組めば、保険で儲けることができます。もちろんそれは犯罪です。保険を使うから誰も損をしない、というのは犯罪者の理屈で、結果として保険料が上がるのでみんなが損をすることになります。
新手の当たり屋の可能性があるということで、防衛策として上げ下ろしだけは本人にしてもらい、スタッフはノータッチになった、というのが真相のようです。
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