最近増えているキャディバッグの“上げ下ろしはセルフ”って、どうなの?

“お車からのキャディバッグの上げ下ろしは、お客様のセルフとさせていただいております。ご自分で下ろしたキャディバッグをスタッフにお渡しください”という看板が、車寄せにいくつも立っているゴルフコースが急増しているそうです。

ちゃんと立て札を読まずに運転席から操作してトランクを開けて、キャディバッグを下ろしてもらうのを待っている人が続出し車寄せは大渋滞、というシーンも同時多発的に起きているとか。現場は軽く混乱をしている様子です。

「世も末だねぇ。そんなことまで経費削減でサービスしなくなるなってさ」と嘆いているオールドゴルファーもいるようですが、大手の系列ゴルフコースでは車からの上げ下ろしだけではなく、キャディバッグをカートの近くまで運ぶところまでがセルフというケースもあるようです。

日の出早朝ゴルフなどでは、スタッフがいないのでセルフでカートにキャディバッグを積むのは当然ですが、通常営業では聞いたことがありませんでした。

このようなスタッフがいないケースは経費削減になるのかもしれませんが、車からキャディバッグを上げ下ろしするだけで、待機しているスタッフに渡すのであれば、スタッフの数や配置時間も変わらないので、経費削減にはなりません。

「今まで通りでいいじゃないか!」と怒る人も少なくないそうです。確かにキャディバッグの上げ下ろしだけがセルフという決まり、というかお願いは、意味がわからないので不愉快に思う人もいるのでしょう。

単なる経費削減ではない裏事情を知ったうえで、僕らは考える!

どうして、“キャディバッグの車からの上げ下ろしはセルフで”が急激に広まっているのでしょうか?調べてみると、想像もしていなかった複数の変な話を耳にしました。共通しているのは、その事故は有名な高級セダンで起きるということです。

スタッフが挨拶をしながら開かれたトランクからキャディバッグを下ろすと、「今変な音がしたけど、大丈夫か?」と運転していた人が大声を出しながら降りてきて、トランクを覗き込んでさらに大騒ぎをするのです。

「この傷!どうしてくれるんだよ!責任者を呼べ!」トランクの中には微かにわかる擦り傷があるのですが、防犯カメラでもトランクの中までは確認できません。

ゴルフコースはこういうときのために保険に加入しているので、保険で処理をします。キャディバッグが車にぶつかって傷を付けてしまう事故は、昔から起きています。もちろん、スタッフは細心の注意を払って未然に防ごうとしますが、なかなかゼロにはなりません

変な話の真相は?

しかし、その多くは保険を使う事故にまでならないことが多いのです。目立たない傷で騒ぐのはセコくてカッコ悪いという見栄や、スタッフが可哀想だと我慢するわけです。

ところが最近になって、有名高級セダンの持ち主が「事故だ」と主張するケースが続発しているというのです。某中古車チェーンがニュースで問題になっていますが、修理工場と組めば、保険で儲けることができます。もちろんそれは犯罪です。保険を使うから誰も損をしない、というのは犯罪者の理屈で、結果として保険料が上がるのでみんなが損をすることになります。

新手の当たり屋の可能性があるということで、防衛策として上げ下ろしだけは本人にしてもらい、スタッフはノータッチになった、というのが真相のようです。

ゴルフコースのやり取りは、魔法の鏡だと思えば見えてくる世界がある!

どんなに小さな傷でも、愛車が傷付くのは誰でも嫌なもの。大切なものを大事にするのは当たり前です。この話を尊敬する先輩に話をしました。「オレは何年も前からスタッフの上げ下ろしは断って、自分でやっているよ」

先輩は、一度新車のバンパーをキャディバッグで傷つけられてから、自分でやろうと決めたというのです。方法は簡単です。車寄せのスタッフに窓を開けながら挨拶して、声を掛けるそうです。「バッグは自分で下ろすから、触らないで大丈夫です!」できるだけ明るく、お互いに変な気分にならないように意識するのがコツだと笑います。

車から自分で下ろしたバッグをスタッフに渡すときも、「よろしくです」とか「ありがとうございます」とか、ひと声かけるそうです。

これで全て解決!

ゴルフコースには、魔法の鏡がたくさんあるのです。相手を癒やす笑顔を意識せずワガママな感情を剥き出しにすると、鏡の魔法でその何倍も酷い仕打ちが戻ってくる…僕の書いたお伽噺が好きで、合言葉のように「魔法の鏡」を口にするのが好きな先輩がいます。

大事なものを人任せにしない、ということを僕らは忘れてしまうことがあります。

相手がプロであろうと、ミスは必ず起きるもの。その責任の半分は、自分にあります。そういうことは全てゴルフから、シビアに教えられています。大事なものは自分で守る、と多くの人が理解すれば、全て解決するのです。

篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。



ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】

第84回(前回へ) 第86回(次回へ)

シリーズ一覧へ