世界のゴルフスイング事情|キャスティングは悪なのか?

ゴルフリサーチャーTASK【世界のゴルフスイング事情】vol.4

2020/07/01 ゴルフサプリ編集部



国内外で収集したゴルフスイングに関する最先端情報を「Jacobs 3D」アンバサダー、ゴルフリサーチャー「タスク」が独自の視点と考察を交えてお届けします!

皆さんがよくご存知の帝王ジャック・ニクラスは、ダウンスイングの際にどのタイミングでリリースするのかという質問に対し、「切り返し直後から即座にリリースするに決まっているだろう」と発言しています。

この発言は、驚きをもって受け止められました。なぜなら、その発言以前に発売されたアメリカのゴルフ雑誌の記事において、ニクラス本人のコメントとして「Itisimpossibletoreleasetheclubtooearlyinthedownswing(ダウンスイングでクラブを早くリリースすることはできない)」と書かれていたからです。

しかし、実際にはその記事のニクラスのコメントには続きがあったのです。それは「左側に移動してクラブをターゲットラインの内側から入れられないのであれば……」というものです。何故か世の中には、その部分が端折られて伝播したと思われます。

ニクラス全盛のスイング動画を見ていただければわかりますが、クラブはシャローアウトし、見事なインサイドアタックでインパクトを迎えます。タイガーやマキロイなどを見慣れた我々でも唸ってしまうような素晴らしいスイングです。そのニクラスが、切り返し直後にリリースしなくてはいけないと述べているのです。もちろん、これは本人にしかわからない感覚表現ですが、私たちに大きな示唆を与えてくれます。

トップからすかさずリリースするという発言は、いわゆる「溜めない」ということなのか、「早期にキャスティングしろ」「アーリーリリースしろ」という意味なのかと、訝ってしまいます。しかし、ニクラスのスイングを観察するとデリバリーポジションまでしっかりと「溜め」が観測され、ダウンスイング後半に強烈に右ヒジを伸ばしてリリースしているように見えます。

ニクラスのスイングをデータで解析できる機会はないでしょうから断定はできません。しかしながら、前述の記事で端折られてしまった部分に全てが詰まっているように感じます。すなわち、端折られた部分が「右サイドで飛球線後方へさっさとリリースする」ということだとすれば、PGAツアープロに共通するキネティクスエネルギーの解析結果と一致するからです。