S2H2アイアン|キャロウェイゴルフ革新的な発想と独自の開発力

商品開発はドラマ!!!|今だから言える驚きのストーリー[第5回]

2021/06/06 ゴルフサプリ編集部



ゴルフメーカーの商品開発におけるドラマチックな業界裏話をメーカー勤務経験のフリーライター・嶋崎平人が語る連載企画。今回は「S2H2アイアン」が主役のストーリー。
GOLF TODAY本誌 No.588/68ページより

イリー・リーブス・キャロウェイとリチャード・C・ヘルムステッターとの出会いが、現在の世界トップゴルフメーカーのキャロウェイゴルフを生み出した。そのスタートとなったクラブがS2H2である。

キャロウェイゴルフは1982年ジョージア州出身のワイン醸造で大成功したイリーが、カリフォルニア州のゴルフクラブメーカー「Hickory Stick USA」を買収し、社名を「Callaway Hickory Stick USA」(1988年に社名を「Callaway Golf Company」に変更)としてスタートした。

創業から39年でグループの売上は約15億9000万ドルに達し、世界のトップゴルフメーカーに成長した。キャロウェイの創業期に詳しいゴルフジャーナリストの松尾俊介さんにお話を伺った。

イリーとヘルムステッターとの出会いは1982年友人を介して、一緒にゴルフをしたことが始まりである。当時、ヘルムステッターは全米でビリヤードの選手として有名で、ビリヤードで球を突くキューを製造するトップメーカーの社長でもあった。そのキューメーカーがあったのは日本である。現在も株式会社アダムジャパンとして、キューの世界のトップメーカー。当初米国で生産していたが、日本製の高い職人の技術力に感心し、自分のアイデアと最新の設備を日本に持ち込んでの製造に切り替えた。アダムジャパンのホームページを見ると、創業は1970年で「有限会社アダムカスタムキュージャパン」として誕生し、アメリカ向けのカスタムキューを製造するところからスタートしている。その初代社長はヘルムステッターである。イリーとヘルムステッターがゴルフで出会い、イリーがヘルムステッターのキュー開発生産技術のノウハウの高さを気に入り、キャロウェイにスカウトした。それが1986年だ。

ヘルムステッターは日本で15年以上生活していたので日本語が堪能。蛇足であるが、筆者がヘルムステッター氏に最初にお会いしたのが1987年で、筆者がゴルフインパクトを計測する機器を開発していた時に打ち合わせに来られ、その流ちょうな日本語と、測定の原理を説明したときの理解力と物事の本質を見抜く力に感心し、本当に「頭の良い人だな」との印象が強く残ったことが思い出される。イリーもヘルムステッターと出会ったときに、この人物であれば、間違いないと判断したのであろう。