N.S.PRO 950GH|スチールシャフトの良さをもう一度認知して欲しい! その一念で取り組む

商品開発はドラマ!!!|今だから言える驚きのストーリー[第10回]

2021/11/08 ゴルフサプリ編集部



ゴルフメーカーの商品開発におけるドラマチックな業界裏話をメーカー勤務経験のフリーライター・嶋崎平人が語る連載企画。今回はN.S.PRO 950GHが主役のストーリー。
GOLF TODAY本誌 No.593/68ページより

ドライバーのシャフトは現在100%カーボンシャフトが使われている。一方、アイアンのシャフトは現在でもスチールシャフトが主流である。この流れを作ったのが1999年発売された日本シャフトの軽量スチールシャフトN.S.PRO 950GHである。

90年代アイアンシャフトは当時全盛の尾崎将司がカーボンシャフトを使い、カーボンシャフトが主流となる流れであった。N.S.PRO 950GHの登場でこの流れが一気に変わった。このシャフトがどのようにして生まれたか、日本シャフトの営業部営業2課主査でカタログ、広報も担当している栗原一郎氏にお話を伺った。

栗原氏は2004年入社で営業に配属された。学生時代、日本大学の学部ゴルフ同好会に所属し、女子ツアーで1年間、岡本綾子プロのキャディや小林浩美プロのキャディもやっていた。入社後は女子ツアーのプロ担当も経験、プロの要望もよくわかっている。

N.S.PRO 950GHの開発は、当時の池田正和社長の号令で1998年に始まった。カーボンシャフト全盛時代であったが、これに対抗し日本シャフトのお家芸であるスチールシャフトをもう一度ゴルファーに使ってもらいたい。そのためには120グラム前後が一般的であったスチールシャフトで、「100グラムを切る軽量スチールシャフトを」という確固たるポリシーを固めた。

また、97〜98年頃プレシジョン社のライフルシャフトが流行り、まだスチールはいけるのではという信念もあった。開発担当は当時の開発課長の岩瀬政仁氏であった。スチールシャフトの強度やフレックス基準は、120グラムのものがスタンダードで、この基準を満たしながら、軽量スチールシャフトを造ることに取り組んだ。目標としたのは90グラム。強度とフレックスを満足させるためには、シャフトの内径を大きくする方法で試作してみると、こん棒のように不格好で、ゴルフメーカーやゴルフ工房の関係者に見せると「ゴルフシャフトをなめているのか」「使い物にならない」との厳しい評価であった。

こうした問題を解決するために、既存のフレックス概念を変え、従来基準よりワンフレックス軟らかい基準でシャフトを造ることを考えた。スチールシャフトのフレックス概念を変えるには、当時の営業などがスチールシャフトはこうあるべきだとの固定概念があり、大きな抵抗があった。

ただ、スリムな軽量スチールシャフトを造るためには避けては通れなかった。

さらに、薄肉にしても粘りがあり、強度のある材料の開発は欠かせなかった。日本シャフトの親会社はバネで有名な日本発条であった。そのため鉄鋼材料メーカーとの結びつきが強く日新製鋼と共同開発した靭性と強度を両立したNSGS8655V(特許)を使用した。この2つを組み合わせてフローキックポイント設計の軽量スチールシャフトN.S.PRO 950GHが完成した。