ゴルフクラブの「バランス」について考える

深読み! ギアカタログ|今回のテーマ【バランス】

2021/03/30 ゴルフサプリ編集部



ゴルフはプレーヤーの技術だけでなく、使っている道具の良し悪し、そして選び方が結果を大きく左右するスポーツだ。この連載では、そのゴルフギアについて深く深〜く「深読み」した話を紹介していく。今回は「バランス」について深読みする。

GOLF TODAY本誌 No.586/134〜135ページより

ゴルフクラブのバランス=スイングウェイトの考え方を、ロバート・アダムスが発明してから約1世紀が経った。長さの違う道具の振り心地、重さ感をそろえるというのが目的であり、実際にクラブ製造に生かしたのは当時最大のクラブメーカーだったケネススミス社。長さの異なるクラブの製造管理の目安として採用したのが始まりだ。基本的に、長さが長いものはヘッドを軽く、短いものは重くすると振り心地は近づくように感じる。その数値化ということで、クラブを制作する側としては重宝したわけだ。

特にアイアンセットは、番手ごとに半インチ刻みで長さが変わる設定とした際に、ヘッド重量は約7gずつ変えることになるが、ロフトの大きい番手ほどフェースが大きくなるぶん、重くなることと整合性が取れて良かったのだと思う。ただし、振り心地をそろえるといっても木製のヒッコリーシャフトではかなりアバウトだったはずだ。重量は200g前後、トルクは非常に大きく、個体差もスチールよりはるかに大きかった。だが、1930年代に130g前後のスチールシャフトの登場により、重量管理がしやすくなり、バランスはスペック基準の1つとなった。

当初、革巻きグリップの先端があった14インチを支点としたバランス計からスタートしたが、それをケネススミス社がウッドとアイアンで少し異なる数値で合わせる12インチ支点の改良版を開発。1950年代に初めて日本に入ってきたのはこのタイプで、1990年ごろまで使われていた。現在は、14インチ計で統一されているが、このことからもわかるように、バランス計の支点に科学的根拠はない。さらに言えば、シャフト重量がカーボン(ウッド)とスチール(アイアン)で50gも違えば、バランス数値を合わせてもまったく振り心地は変わってしまう。シャフトが軽くなればバランス数値も軽くなり、それを補おうとヘッドを重くしたり、レングスを伸ばしたりすると、数値以上の重さ感と振りづらさを感じるようになるのが通常だ。