ゴルフクラブの「グリップ」について考える
深読み! ギアカタログ|今回のテーマ【グリップ】
ゴルフはプレーヤーの技術だけでなく、使っている道具の良し悪し、そして選び方が結果を大きく左右するスポーツだ。この連載では、そのゴルフギアについて深く深〜く「深読み」した話を紹介していく。今回は「グリップ」について深読みする。
GOLF TODAY本誌 No.591/118〜119ページより
シャフトはヒッコリーからスチールに移行したことでスペックの均質化、量産化が進んだ。同様に、パーツとしてのグリップも、革巻きからラバー、それも1953年以降に登場した「スリップオン」タイプに移行したことが、大きなターニングポイントとなった。
ヒッコリーシャフトが主流になった19世紀初頭から、グリップは革巻きが主流となっていた。下巻きにコルクなどを使用して太さや形を整えていたこともあり、手持ち部分の硬さやしっかり感も演出できていたという。当時のプロは、手に馴染むように革をほどいては巻き直すことを繰り返し、試合に臨んでいた。
1947年に、空気圧式クラッチブレーキの発明者トーマス・フェィウィックが、世界初のラバーグリップを開発。そのブランドが、現在も続いている『ゴルフプライド』だ。
ただし、当初はシャフトに焼き付けて固定する方式で量産も難しく、使用していると手が黒ずんでくるほどで耐久性も弱かったため、すぐに革巻きにとって代われるものではなかったようだ。
だが、1953年に、現在のように挿し込む方式で装着できる「スリップオン」タイプを開発。すでに主流となっていたスチールシャフトとともに、クラブの量産化が劇的に捗るようになる、ということで各メーカーがこぞって採用。
1960年代以降、革巻きはフェードアウトし、現在では素材こそゴム系だけでなく樹脂系も加わったとはいえ、装着方法は「スリップオン」方式オンリーとなっている。
製法は素材により、コンプレッション(直圧)成型とインジェクション(射出)成型が主だが、いずれもサイズやスペックを均質に量産できるメリットがある。
このおかげで、技術的にもコスト的にも、手軽にグリップ交換ができるようになった。ちなみに、グリップ交換の目安は約1年。ラウンド数、使用頻度が少なくても、皮脂や汚れの付着、摩耗による劣化は避けられない。トーナメントプロの場合は2週間〜2カ月ごとに交換するという。滑りや硬さなどの違和感が生じる前に交換するのがベターだ。