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ゴルフクラブの「グリップ」について考える

深読み! ギアカタログ|今回のテーマ【グリップ】

2021/08/28 ゴルフサプリ編集部

ゴルフはプレーヤーの技術だけでなく、使っている道具の良し悪し、そして選び方が結果を大きく左右するスポーツだ。この連載では、そのゴルフギアについて深く深〜く「深読み」した話を紹介していく。今回は「グリップ」について深読みする。

GOLF TODAY本誌 No.591/118〜119ページより

装着方法が劇的に変わった「スリップオン」

シャフトはヒッコリーからスチールに移行したことでスペックの均質化、量産化が進んだ。同様に、パーツとしてのグリップも、革巻きからラバー、それも1953年以降に登場した「スリップオン」タイプに移行したことが、大きなターニングポイントとなった。

ヒッコリーシャフトが主流になった19世紀初頭から、グリップは革巻きが主流となっていた。下巻きにコルクなどを使用して太さや形を整えていたこともあり、手持ち部分の硬さやしっかり感も演出できていたという。当時のプロは、手に馴染むように革をほどいては巻き直すことを繰り返し、試合に臨んでいた。

1947年に、空気圧式クラッチブレーキの発明者トーマス・フェィウィックが、世界初のラバーグリップを開発。そのブランドが、現在も続いている『ゴルフプライド』だ。

ただし、当初はシャフトに焼き付けて固定する方式で量産も難しく、使用していると手が黒ずんでくるほどで耐久性も弱かったため、すぐに革巻きにとって代われるものではなかったようだ。
 だが、1953年に、現在のように挿し込む方式で装着できる「スリップオン」タイプを開発。すでに主流となっていたスチールシャフトとともに、クラブの量産化が劇的に捗るようになる、ということで各メーカーがこぞって採用。

1960年代以降、革巻きはフェードアウトし、現在では素材こそゴム系だけでなく樹脂系も加わったとはいえ、装着方法は「スリップオン」方式オンリーとなっている。

製法は素材により、コンプレッション(直圧)成型とインジェクション(射出)成型が主だが、いずれもサイズやスペックを均質に量産できるメリットがある。

このおかげで、技術的にもコスト的にも、手軽にグリップ交換ができるようになった。ちなみに、グリップ交換の目安は約1年。ラウンド数、使用頻度が少なくても、皮脂や汚れの付着、摩耗による劣化は避けられない。トーナメントプロの場合は2週間〜2カ月ごとに交換するという。滑りや硬さなどの違和感が生じる前に交換するのがベターだ。

体調や年齢の変化に合わせて考えたい太さ、重さの選択肢

グリップの握り心地はほぼ太さで決まる。手の大きさ、シャフトのバット径、下巻きテープの厚さを考慮して選ぶ必要がある。最近は重量バリエーションも豊富なので要チェック。

トレンドは弱いテーパーとバックライン

グリップは、クラブとプレーヤーの唯一の接点。本来なら、プレーヤーの多様性に合わせて最もバリエーションやチューンが必要なパーツかもしれない。

購入時に選択できるスペックは基本的に5つある。素材、太さ、重さ、カラー、そしてバックライン(背張り)の有無だ。

素材は天然ゴム、合成ゴムのラバー系と、シリコーンなどの樹脂系が主流。いずれも握り心地やタッキー感の違いで好みが分かれる。

雨に濡れても水分を含まず、タオルひと拭きで滑らなくなる樹脂系は、カラーバリエーションも豊富。グリップ自体のトルクを抑えるタイプなどもある。

だが、ラバー系の人気も根強い。安価であり、伸縮性を生かして引き伸ばして細くするなどのチューンもしやすい。コード入りなど、表面加工のバリエーションも多い。

次に、太さと重さ。グリップは、内径でサイズが分かれている。内径が小さいほどシャフト装着時に膨らんで太くなるわけだ。現在、男性用は「58」「60」「62」の3サイズが主に展開されている。

シャフト径の標準が1980年代に少し太くなってから、グリップは「60」が標準サイズとなっている。

基本的に、内径が小さいほど肉厚になり、重量も重めになる。「60」サイズで約50gが標準。サイズ違いで、2〜5g増減する。

ただし、最近は軽量グリップの開発も進んでおり、20g台のものも作られている。クラブの軽量化、バランスを考えるなら要チェックだ。

太さのトレンドとしては、右手部分と左手部分の太さの差が少ない、つまりテーパーの弱いタイプがプロツアーで流行している。最新ギアの挙動や、それに合うスイング技術が求めているのかもしれない。

最後にバックライン。ドライバーなどホーゼルの可変機構でシャフトを回すと、バックラインの位置も変わる。それを嫌って減少傾向になるかと思われたが、実際は逆。バックラインを強調するモデルも登場している。ツアープロにとってもフェース向きの確認、アライメントにはやはりバックラインが有効なのだ。

今や重量選びもシャフト並み

現在、市販品で軽いものは20g台から、重いものは60g台(パター用を除く)まで約40gの幅がある。ちなみにブライソン・デシャンボーが使用する極太モデルは51gと標準的だ。

グリップにもトルクはある!

シャフト同様、スイング中にグリップもねじれる。コード入りなどは硬さもあり、トルクが抑えられやすい。樹脂系では素材や構造で計算してトルクを抑えているモデルもある。

バックラインは効果“大”

内側の一部を平らにすることで、シャフト装着時に外側に張り出すのが「バックライン(リマインダー)」。最近は『ゴルフプライドアライン』など、強調したモデルも登場。

文/戸川 景


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