スイングバランスを合わせても「同じ振り心地」には絶対にならない
「飛距離の階段」ナゼ作れない?―「バランス理論」の盲点|第1回
他のスポーツとは異なり、飛距離を打ち分けるために10数本のクラブを用意するのがゴルフ。
それらをほぼ「同じ振り心地」にする、という目的で採用されているのが「スイングバランス理論」だが、果たして本当に正しい考え方なのだろうか?
文/戸川景
「スイングバランス」とは、単純に言うと「長いものは軽く、短いものは重くする」という考え方。振り心地が似る、同じリズムとテンポで振りやすくなるというが、クラブヘッドの構造上、この考え方はナンセンスだ。
クラブヘッドはルール上、パター以外は「重心距離」がある。たとえば同じ長さ、同じパーツ重量で揃えればバランス自体は一致するが、「重心距離」が違えば振り心地はまったく変わってしまう。
また、ドライバーのようにヘッドMOI(慣性モーメント)の大きさが大きく異なれば、当然フェースコントロールも含め、振り心地は違ってくる。
では、アイアンセットで番手ごとの重心距離とヘッドMOIを均一に揃えたら(ほぼ不可能だが)? それでも実際の動的モーメントが揃うことはない。つまり「なんとなく長いほうが軽いと同じ感じになるかな」ぐらいの目安であり、この時点ですでに1g単位でバランスを合わせることに意味はない、と言える。