たかが、ゴルフボール。されど、ゴルフボール。

ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第9回

2022/03/14 ゴルフサプリ編集部 篠原嗣典



ゴルフの虜になってもうすぐ半世紀。年間試打ラウンド数は50回。四六時中ゴルフのことばかりを考えてしまうロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が、コースや色々な現場で見聞きし、感じたことを書いたのが【毒ゴルフ・薬ゴルフ】です。大量に飲めば死んでしまう毒も、少量なら薬になることは、ゴルフにも通じるのです。

撮影/篠原嗣典

ゴルフには数百年の歴史がありますが、その発祥については、諸説あってハッキリしていません。
ただ、用具の歴史を紐解いていくと、用具の大革命がゴルフを変えて、結果的に、ゴルフが広まっていく原動力になったことがわかります。
ゴルフボールも、然りなのです……

ゴルフボールの最初の革命は、フェザーボールと呼ばれる、水鳥の羽根を牛革の袋の中にぎゅうぎゅうに詰めたボールの登場でした。現在で最も近いものは、野球の硬球という感じです。
フェザーボールは、軽いのに、反発力があり、それまでの木製のボールの倍の飛距離が出ただけではなく、高いボールを打つことも出来たのです。

20世紀末に、フェザーボールを復元して、プロゴルファーが打ってみるという企画がありましたが、200ヤードを楽々越えて、もっと飛ばないはずだと予測していた賢者たちを驚かしました。
フェザーボールの出現で、ゴルフコースも現代のゴルフコースにかなり近くなり、ゴルフをする人口も増えたのです。

ほとんどのゴルファーは知りませんが、現在でも、このフェザーボールの影響を受けた上で、僕らはゴルフをしています。

ゴルフルールで、打った球が分かれてしまった場合は、無罰で打ち直しという条項がありますが、これは、フェザーボールの影響なのです。フェザーボールは、縫い目が弱くなって、打った衝撃で裂けるように中身が散乱することがあったからできたルールで、現在でも、そのまま残っているのです。

次の改革は、ガッタパーチャボールと呼ばれるゴムのボールです。
フェザーボールは、量産が出来ず、非常に高価という弱点がありました。

この当時、ヨーロッパ諸国は、東南アジアから送る荷物を保護するために、天然ゴムを緩和材として使用していました。19世紀初頭、荷物を受け取った後、ゴムはゴミになっていましたが、型に入れて熱を加えれば自在に形を変える性質に気が付いた人々は、ゴムを色々なものに加工し始めたのです。

ゴルフボールが作れるはずだと考えた人もいました。すぐに、ゴムを入れて、暖炉で熱してボールの形に成型する金型が作られて、バカ売れしたそうです。
ゴムで出来たボールは、金型があれば、タダ同然で、何個も作れますし、傷んだら作り直すことも可能でした。