「1勝の重み」を何よりも大切にする米国のPGA TOUR

レックス倉本のGOLFアメリカンな話”ちょっと聞いて〜や‼︎”/第19回

2022/03/17 ゴルフサプリ編集部 レックス倉本



3月10日(木)から大雨のために1日伸びて3月14日(月)まで開催されていたThe Players(ザ・プレーヤーズチャンピオンシップ)の現地から戻ってきました!いやー、今年のThe Playersは初日から松山選手の直前の棄権というショッキングなことから始まり、雷雨の悪天候でほとんどプレーが進まず、2日目が終わった時点でファーストラウンドを消化していない選手が多数。3日目もスタートが12時となり、今度は寒さと強風でセカンドラウンドも多くの選手が消化できず。やっと晴れた4日目になんとか最終組が日没ギリギリでサードラウンドの9ホールを終え、結局のところ試合は月曜日フィニッシュとなりました。一時は火曜日フィニッシュも囁かれたそんな長ーい1週間を振り返ります。

まず、今年のコースコンディションについて。いつもはこんなビックイベントではフェアウェイもグリーンも硬くてなかなかボールを思い通りに止められないような設定になっているんですが、今回は大雨が続いたことで第3ラウンドもファイナルラウンドの月曜日もグリーンはピッチマークがベタッとついてボールもしっかり止まるほど柔らかかったのが見てわかりました。

このコースは数年前に大改修をしてグリーンの下にサブエアーという換気扇が設置されていて、今回のような雨の時に換気扇を回してグリーンを乾かすことができるんですが、先週はそれをあえてそれほど利用していなかったのではないかと想像しています。ツアーの進行がいかんせ押せ押せの状態だったので日曜日も月曜日も極力ホール数を消化したいので、いかにプレー進行を早くするのかを考えたら、グリーンを柔らかくするのが一番コースの難易度を下げることになってプレーも早くなる。PGA TOUR側はそのことを前提にセッティングをしたんだと思います。

だから最終日ダスティン・ジョンソンは63、キャメロン・スミスも10個バーディを取る、いつもとは違った展開になりました。このコースの面白いところは、そんなセッティングでも大叩きをする可能性も含んでいること。スミスの18番の池ポチャがあったようにいろんなところに罠がある、本当に面白いコースです。

その18番、私が放送中のホール紹介で「セカンドショットが右の林の中からの場合、木の下を抜くショットが左の池に入る危険性が大である」と話したのですが、その罠に優勝争いをしていたブラッドリーもスミスもハマってしまいました。右の林の中からは低い弾道で木の下を抜くことになり、必然的にフック系のボールになります。その球筋とフェアウェイが左の池の方に傾いていることが重なってボールの転がりが止まらず池に到達してしまうんです。だからあの2打目は難しいんです。うまいこと作っていますよね。

さて、優勝したのはオーストラリアのキャメロン・スミス。メンタルが強いですね。こちらの人たちはよくGRAINDER(グラインダー)と表現します。グラインドというのは、食いついていくと言うか、余裕を持ってプレーするんじゃなくて、一生懸命1打1打なんとかショートゲームでパーを重ねてスコアーを伸ばしてなんとかスコアーを作るタイプの選手のことを言うんですが、スミスはショートゲームが上手いこのタイプ。

そして、毎年毎年ボールストライキングの精度も積み上げてきていて、根本的にグラインダーのしぶとく頑張っていく選手が見事に花開いてきましたね。18番の池に入れた後のアプローチも見事でした。精神的にすごく追い詰められた状況でも自分のプレーがしっかりできる、これまで培ってきたグラインダーのメンタルが見て取れる素晴らしいプレーでした。