「ワンレングス」で10ヤード刻みにできるわけがない本当の理由
「飛距離の階段」ナゼ作れない?―「バランス理論」の盲点|第3回
ほぼ「同じ振り心地」の「フルショット」によって飛距離を打ち分けるのが「バランス理論」の目的のはず。
ブライソン・デシャンボーの採用で注目された「ワンレングス」なら、ほぼ「同じ振り心地」になる。
だが、飛距離の打ち分けに合理的とは言えないようだ。
写真/渡辺義孝
「ワンレングス」の場合、各番手のパーツ重量、ヘッドの重心距離、ヘッドMOI(慣性モーメント)、重心アングルを揃えたら「振り心地」はほぼ同じになる。これらのスペックを揃えること自体難しいが、実現できたとしても「飛距離の階段」は何段作れるだろうか。
というのも、レングスと重量が同一なら、フルショットのヘッドスピードが変わらない。つまり、飛距離差はロフト角にしか頼れなくなるわけだ。ヘッドスピードが同じなら10~15ヤード刻みで打ち分けるのに、番手ごとのロフト角の差は3~5度では足りない。6~8度は必要になるはずだ。
さらに「ワンレングス」は打ちやすさを考えて37~38インチ(6、7番アイアンの長さ)に設定されやすいが、そうなると一般的にヘッドスピードは35~39m/sぐらい。ロフト角は26度以上ないと、弾道が低くなりすぎてキャリーが伸びなくなる。となると、「飛距離の階段」はせいぜい4~5段ぐらいしか作れないだろう。