ゴルファーは空を見上げる

ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第16回

2022/04/29 ゴルフサプリ編集部 篠原嗣典



ゴルフの虜になってもうすぐ半世紀。年間試打ラウンド数は50回。四六時中ゴルフのことばかりを考えてしまうロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が、コースや色々な現場で見聞きし、感じたことを書いたのが【毒ゴルフ・薬ゴルフ】です。大量に飲めば死んでしまう毒も、少量なら薬になることは、ゴルフにも通じるのです。

撮影/篠原嗣典

「空が高いですね」
という常套句は、夏から秋になった空を見上げたときに、主に使われます。

都会で見上げるビルに囲まれた多角形な空でも、ゴルフコースでも、空の高さは季節でかなり違います。
もちろん、空が地表から離れたり、近づいたりはしないので、科学的な説明としては、空気中の水蒸気量が変わって、澄んでいると遠くまで見えるので高く見えて、逆に霞んでいると低く見えるのです。

21世紀になって、ゴルフコースの季節の移ろいを記録したくて、コース画像を撮ることが習慣になりました。
約20年間で、30万枚以上になりました。

肉眼でしか見られない形式もありますが、レンズを通して初めてわかる景色もあります。
ゴルフコースの空は、ゴルファーの心情も反映されがちなのですが、レンズを通すと、ときに、無情で、無機質になった空が写っていて、ドキッとしたりすることがあります。

何とも皮肉なのですけれど、青空の青さや奥深さは冬ほど際立つのです。
コースの緑が美しくなる季節には、地表の生物にエネルギーを吸い取られたように青空は白っぽく、薄くなってしまうのです。
もちろん、2022年のテクノロジーで、青空を美しく見せる加工は簡単にできますが、見る人が見れば、それは虚偽の気味が悪いシーンに感じてしまうのです。

空は多弁です。

ゴルフのたびに、誰でも空を見上げることが何度もあるものです。
お天気を確認する目的のときもありますし、高弾道なボールを追って見上げるときもあります。

春から夏になっていく季節の中で、低い雲で覆われた空を見ることもあると思います。
でも、印象に残るのは、青空なはずです。それは、知らない間に、低く見えるようになった青空なのです。空の低さとギラギラし始めた太陽がリンクする青空は、夏が来たことをゴルファーに教える照明装置だからです。