愛すべきゴルフ用具たち。いつ買うのか? 今でしょう!
ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第17回
ゴルフの虜になってもうすぐ半世紀。年間試打ラウンド数は50回。四六時中ゴルフのことばかりを考えてしまうロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が、コースや色々な現場で見聞きし、感じたことを書いたのが【毒ゴルフ・薬ゴルフ】です。大量に飲めば死んでしまう毒も、少量なら薬になることは、ゴルフにも通じるのです。
撮影/篠原嗣典
幼稚園で好きになった初恋のSちゃんのことは、彼女が別の小学校に進学したのにもかかわらず、小二まで大好きでした。
次に好きになったHちゃんは、小二から中一まで大好きでした。
いきなりの恋バナですが、何を言いたいかというと、三つ子の魂百まで、でということで、僕は“長く愛すタイプ”らしいということです。
この後、3人目のKちゃんは、初デートをして、直後に振られて、次のHちゃんも初デートした数時間後に振られて、何度もデートを重ねる恋人同士になるための迷走が始まり、恋愛の謎に挑戦する大冒険が始まったのです。
この後、高校卒業までの6年間で、いわゆる彼女と呼べる条件をクリアした女性の数は四十数名になり、この時期の僕しか知らない友人は、“短くしか愛せない軟派なタイプ”だと認識しているのです。
自己弁護するわけではありませんが、短い恋愛の96%は僕が振られて終わるわけで、命懸けで愛するスタイルに彼女たちがビビってしまうパターンが続くのは、振り返ると、若さ故の答えを相手に求めてしまう悲喜劇だったというわけです。
ジュニア時代、ゴルフ用具は、叔父か、祖父からプレゼントされるものでした。
父は最初のセットを用意してくれましたが、その後は「自分で稼げるようになったら買えば良い」と、ボール一つも買ってはくれませんでした。4回目のラウンドで100を切って、8回目のラウンドでハーフを30台でプレーできたという段飛ばしの上達を目の当たりにしていた叔父や祖父が、ナイショで、そのレベルに見合ったドライバーやウェッジやボールなどをプレゼントしてくれたのです。
最初に愛機となったアイアンセットは、13歳から19歳まで使っていました。
ベンホーガンのAPEXというアイアンは、自分とほぼ同い年のクラブで(それを知ったのは20年後でしたが)、上級者用のバリバリのマッスルバックアイアンでしたから、買い換える必要がなかったのです。
その後、自分で用具が買えるようになって、スポルディングで2セット、数ラウンド程度の浮気がありつつも、ミズノになって4セット目が、今の愛機です。
ゴルフ歴43年で、7セットですから、平均しても1つのアイアンを6年ちょっとになります。
厳密には、22歳でミズノのアイアンになって、57歳までの35年間で4セット。4セット目は、まだ2年なので、1セット10年以上使っている計算になります。
クラブを長く使うことが正解だとか、良いことだというつもりはありません。
人それぞれに事情がありますし、愛し方も色々ですから、短いスパンで用具変更して、常に最新の用具でゴルフをするのも、ゴルフの楽しさとして十分に理解できるのです。
ただ、僕は自分が使用している用具に愛がない人とゴルフ仲間にはなれません。
ゴルフにおいて、用具と使い手の関係は、ある意味では生き様が隠せずに露出している部分です。
金と権力で、強引に愛人にした女性を見せびらかす愚人をリスペクトできないように、ゴルフ用具に愛を注げない人にも同情するしかありません。
自分の使用している用具を愛しているからこそ、ゴルフ用具は真価を発揮するというものです。
ときには、一方的な片想いだと痛感させられて、人知れず涙を流すことも含めて、僕にとってはゴルフなのです。