ドライバーは、そもそも何インチからが長尺?

ゴルフそもそも調査部 vol.1|今回の調査テーマ|何インチからが長尺?

2022/06/01 ゴルフサプリ編集部



現代のゴルフギアは、先人の創意工夫が積み重ねられてきたもの。時に感じる疑問や「なぜ」「どうして」を、それらを形作ったきっかけやエピソードで振り返ってみよう。今回の調査テーマは「長尺」だ。

GOLF TODAY本誌 No.600/148〜149ページより

シャフトを長くすれば飛ぶ。この単純な考え方は、おそらくゴルフクラブが基本の3パーツであるグリップ、シャフト、ヘッドで構成されるようになった始めからあったのだろうと思う。

だが、カーボンシャフトで軽量化の可能性が見える1970年以前は、試すゴルファーはほんの一握り。競技の記録を振り返っても、長尺ドライバーを駆使して活躍した選手は非常に少ない。

というのも、ヒッコリーシャフトは重量が200g以上。43インチ前後で振るのが通常だった時代に、ねじれやすくて重いヒッコリーを長尺化することは、ミート率のダウンと振りにくさのデメリットが大きすぎただろう。この頃は44インチでも長尺だったということだ。

だが、20世紀初頭の全英オープンで2位に入ったこともある名手、ベン・セイヤーズは、身長約160cmの小兵でロングヒッターに対抗すべく、46インチを使いこなしたという。

スチールシャフト時代では、グランドスラマーのゲーリー・プレーヤーが通常より1インチ長い44インチに変更してキャリーを伸ばしたのが有名。ちなみにライバルだった、同じくグランドスラマーのジャック・ニクラスは短尺42.75インチで300ヤード飛ばしていた。

曲がりやすい糸巻き構造ボールとパーシモンへッドの組み合わせではやはり長尺化は乱れるリスクが大きかったはずで、使いこなすにはかなりの努力が要求されただろう。

カーボンシャフトが登場しても、慣性モーメントの小さいパーシモンヘッドで挑んだ名手は杉原輝雄だけだった。曲がらない打ち方を極め、45インチまで伸ばした。

その状況を変えたのがメタルヘッドとカーボンへッドの普及だ。慣性モーメントが大きくアップしたことで、ミート率のリスクが軽減。プロギアの『μ240』、クレインの『ENA(NASA)』が、44~45インチを一般ゴルファーでもトライしやすい長さに引き上げた。

そして1990年代のチタンヘッドが登場するころには、45インチがスタンダードとなっていった。

杉原輝雄もメタル、チタンヘッドと移行するうちに47インチまで使いこなしていった。