飛距離に囚われてないですか?伝説のゴルファーが語る、本当の醍醐味とは

伝説のアマチュアゴルファー中部銀次郎の「言の葉」 vol.3

2022/08/25 ゴルフサプリ編集部



新連載、伝説のアマチュアゴルファー中部銀次郎の「言の葉」。
「プロより強いアマチュア」と呼ばれた中部銀次郎氏が遺した言葉は、未だに多くのゴルファーのバイブルとなっている。その言葉1つ1つを、皆さんにもお届けしていく。

GOLF TODAY本誌 No.603/68〜69ページより
イラスト/北村公司

中部銀次郎さんは煙草を燻らしながら、ゴルフ談義に耽る酒飲みたちを見て微笑む。そして陽に焼けた顔をほころばせて言う。

「みなさんはなぜそれほど、飛ばしにこだわるんでしょうかね」
酒飲みたちが、やれ、誰々が飛ばすだの、誰が最近飛ぶだの、そうした飛距離の話に花を咲かせていたからだ。

「私の頃は、飛距離が話題になることはほとんどなかった。誰がどんな球筋でホールを攻めたとか、技術や戦術の話が多かったです。ゴルフの本当の醍醐味は飛距離ではなく、頭を使ったコース攻略法にありますからね」

上品で穏やかな中部さんは飛ばし話を決して低次元とは言わなかったが、もう少しゴルフの本質に関わる話を酒の肴にしてはどうかと思ったようだ。

「ショットにおいてはまずはボールコントロール。自分が思い描く球をしっかりと打つことが肝心です」
それは、中部さんが子供時代、ドライバーショットで大きなスライスに悩んだことが発端かも知れない。父、利三郎さんからゴルフを習った少年時代の中部さんは父譲りのアウトサイド・インのカット打ちだった。それは利三郎さんが関西の大御所、戸田藤一郎プロから習った「前に上げてぐっと引け」というスイングだったからで、どうしてもクラブが外から下りた。アイアンショットは切れ味鋭いものとなったが、ドライバーショットでは球を擦り、大きく右に曲がってしまったのだ。当時のパーシモンウッドはスイートスポットが狭いため、ボールにスライス回転がかかりやすかった。

中部さんは自分のスイングに問題点があると考え、ゴルフ雑誌や本を見て海外の選手たちのスイングを研究した。その中で目にとまったのがサム・スニードのスムーズなスイングだった。体を回してリズミカルに打つ。それもトップ・オブ・スイングのときに手が頭よりも前に出ないスイングだった。その頃の中部さんのスイングはトップで手が前に出ているものだったのである。
サム・スニードのスイングを見た中部さんは、それを自分のものにしようと猛然と素振りを行った。毎日100回の素振りをすることを自らに命じたのだ。

スイング作りは球を打ってはできません。上手く球を打とうとしてしまうため、スイングを固めることが疎かになるんですね。スイングを作るなら素振りを行うことです。毎日、100回の素振りを半年間続けたら、それだけでシングルハンデになれますよ」