『VOKEY FORGED ウェッジ』は最先端だが、まずはその”和顔”にノックアウト!

タイトリストは、2023年4月14日に『VOKEY FORGED ウェッジ』を発売した。日本市場専用モデルで、12年前から続く7代目になる。コピーは“モダンクラシックの頂点に FORGING AHEAD.”だ。このモダンクラシックというワードに、のちのちにシビれることになる。

表面的には『VOKEY ウェッジ』とほとんど差がないように見えるが、それはバックフェースやソールの雰囲気だけで、まずアドレスビューが全く違う。日本風で、いかにも和顔だ。曲線美とヘッドが小さくてシャープで、特にネック周りの処理に古き良き伝統を感じる。

“昔の復刻ウェッジね”と思う人が多いかもしれないが、それとは違う。タイトリスト独自の最先端のテクノロジーである「CO-FORGING製法」と「マルチマテリアル構造」を融合しているのだ。鍛造する際に、別の重い金属を狙った場所に設置して、蓋をするような形で鍛造するのだ。

これで、ロフト別に重心位置を狙った場所に合わせることが可能になったのである。

さて、ではいよいよコースで打ってみよう

ボールをセットして構えてみると、ゾクッとした。僕としては、タイムマシンで時間を遡ったような瞬間だった。ボールを包み込むように見えるのだ。これは、30年間忘れていた快感だった。

コースは気温12℃〜19℃、曇り、強風。使い慣れていて、クラブの影響だけに集中できるということで『TOUR B X』を使用した。

試打したは『VOKEY FORGED ウェッジ』の、ダイナミックゴールド。ロフトとグラインドは、50M(50度 Mグラインド)、56M(56度 Mグラインド)、56K(56度 Kグラインド)の3本である。

あまりにもスピンがかかるので、笑うしかないという奇妙な経験ができた

『VOKEY FORGED ウェッジ』は日本市場専用モデルだが、僕のために作ってくれたのか、と思うほど気持ちがいいアドレスビューだった。

試打してみて、わかったポイントをまとめる。

●打音:音量ちょうど良し。音質はクリアで硬質な音。グラインドでの差は感じず。手応えは敏感。

●弾道:中弾道。高低の打ち分けは自由自在。

●スピン:僕が知る『VOKEY』の中で最強。笑うぐらいの効き。

●飛距離:ロフトより少し飛ぶ。タッチは合わせやすい。

『VOKEY FORGED ウェッジ』は、とにかくアドレスビューで安心感があり、打つほどに自信が蘇っていく経験をした。アドレスで低い球を打ちたい構えをすれば低く飛び、高い球を打つセットをすれば高い球になる。そして、結果的に狙ったところに行くのだ。

最も驚かされたのは、スピン性能。70ヤードから『56M』でフルスイングと同じように打ったところ、6ヤードもスピンバックしたのだ。特別なことは一切しなくても、ボールがツアー系であれば同様の経験はすぐにできる。ウェッジの機能が大爆裂したのだ。

『VOKEY FORGED ウェッジ』はミドルレンジ、グリーン周りでも芯にヒットすればツアーウェッジとしては不合格、というくらいのスピンが効いた。

ウェッジは消耗品である。壊れていなくとも、溝の擦れぐらいでスピン性能がどんどん落ちるからだ。ツアープロの場合、長く使うプロは4試合に1本、神経質なプロなら毎試合新品にチェンジするという。

ツアーウェッジは、過剰なバックスピンがかかるモノは不合格となる。落ちたところに止まるのが最良のバックスピンとされているが、『VOKEY FORGED ウェッジ』はこれでもか、という感じで戻ってくる。

こんなゴルファーにオススメ!

軟鉄は、使っているうちにどんどん擦れて角が丸くなっていく。『VOKEY FORGED ウェッジ』は、長く使うとスピン性能が落ち着いて、ツアーウェッジのようになるというシナリオなのかもしれない。そうだとすると、かなり高額に分類される値段も納得しやすくなる。

『VOKEY FORGED ウェッジ』は、日本のゴルフクラブが世界一と讃えられていて時代に、日本で独自開発された職人技でのみ成り立つウェッジを思い出させる。ウェッジとの相性について、名人の多くはシェイプにこだわるが、その意味を改めて今回の試打で教えられた。

ボールの打ち出しの高さも思い通りなら、キャリーとスピンのかかり具合も狙い通りに行くのだ。
この感覚は、完全に忘れていた。自分の不調と練習不足でできなくなったと諦めていたのに、まるで先週も普通にやっていましたけど、という感じでできてしまうからだ。

『VOKEY FORGED ウェッジ』は、1990年前後の和顔のウェッジが欲しいゴルファーと、とにかくスピンをガンガンかけたいというゴルファーに強くオススメする逸品である。

モダンクラシックという名前に相応しいウェッジに出逢いたいゴルファーは、まずはアドレスをすることである。




篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてでビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。


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