岩井姉妹の勝利の陰の立役者はアイアン? 常識を覆すヨネックスの“超・精密鍛造”製法

戸川景の重箱の隅、つつかせていただきます|第46回

2024/06/07 ゴルフトゥデイ 編集部



スイング、ゴルフギア、ルールなどなど…。ゴルフに関わるすべての事柄の“重箱の隅”をゴルフライター・戸川景が、独自の目線でつつかせていただくコラムです。
Text by Hikaru Togawa Illustration by リサオ
GOLF TODAY本誌 No.624/90ページより

見せてもらえたのは、あるプロの軟鉄鍛造アイアンのスペック表。一目見て、絶句してしまった。

重心距離(厳密には一般的な重心距離ではなくシャフト軸線からヘッド重心までの長さ)と重心高さが全番手、誤差1ミリ以内で揃っていた。通常、ありえない。

ヘッド重量がフローし、ロフトがつけば重心角も変わるのが当たり前。その中で、重心距離を変えず、重心高さを変えないということは、CAD3Dで設計上は可能かもしれないが、製法上不可能のはずだった。特に鍛造では。

鍛造は、鉄を高温で熱して圧をかけて成型する。当然、冷めれば形状はわずかに歪む。ところがヨネックスの軟鉄鍛造は、金型から取り出したままでフェース面を完全に平滑にできるため、通常後で刻むスコアラインも最初から入れることができるという。ここが私にとっては2つめの衝撃ポイントだった。常識が覆ったからだ。

フェースを削らない、溝を刻まないということは、ヘッド重量も変わらない。もちろんバリは取るし、ホーゼルはドリルで削るわけだが、それらはすべて計算で織り込み済み。精密鋳造(ロストワックス)でもここまではできない、という“超・精密鍛造”を実現。世界初だという。