「24時間ゴルフ視聴」を当たり前にしたのはアーノルド・パーマーだった?
佐渡充高のプレミアム・ファイル

ゴルフ番組やゴルフ雑誌ではあまり語られることのないトピックを、ゴルフジャーナリストやトーナメント中継の解説者として活躍する佐渡充高が取り上げ、独自の見解とともにお届けします。
GOLF TODAY本誌 No.630/99ページ
アーノルド・パーマーの数々のレガシーは、次世代に継承され世界的なゴルフ人気へとつながった。中でもゴルフメディアへの貢献はとても大きい。今では「24時間ゴルフ視聴」は当たり前だが、30年前は驚きの着想。パーマーは映像、情報がゴルフ繁栄の起爆剤になるとゴルフチャンネル開局へ動きだした。
パーマーが構想を発表した会見は、実に質素でアットホームだった。93年2月10日カリフォルニア州パームスプリングス開催のPGAツアー開幕直前に、プレスルームから少し離れた小さな特設テントで行われた。出席したのは約20人で欧米記者、大先輩の岩田禎夫さんと僕と妻のみでTVカメラもなかった。パーマーは目を輝かせ、ケーブルTVでの24時間ゴルフ専門局の構想や意義をジョークを交え熱く語りはじめた。
ひとつの競技に特化というのは初の試み。「ゴルフの世界的繁栄に挑戦する」。「欧州、豪州、南アの試合中継、レッスン、ニュース、インタビューなど盛りだくさんの番組で寝ている暇はなくなるよ!」など和やかな雰囲気、気づけば1時間半が過ぎていた。パーマーは最後、ただ一人の女性だった僕の妻を傍らに呼び「貴女も番組に出ますか?」と頬にキス! というオチ(?)もあった(僕は緊張と笑)。
が、開局までゴルフ界のキングであるパーマーでも水面下で奔走するほど大変な道のりだった。この件はパーマーの個人マネジメントから大組織へ成長したIMG社が深く関与。当時、欧州ツアーが勢力拡大、IMGは世界のツアーや他競技でも絶大な影響力を持っていた。一方PGAツアーは枠組みを発展させ、世界ツアーの構想を抱きはじめ戦略上の交錯があった。